三重県知事、カジダンへの道 風呂場を「ついで洗い」
前回のこのコラムで、料理には苦手意識があると書いた。一方で、同じ家事でも掃除はあまり苦にならない。
日ごろ、よく担当するのが風呂掃除。といってもわざわざ掃除タイムを作るのではなく、長男を風呂に入れる前に、浴槽や洗い場を「ついで洗い」することが多い。
まず、シャワーで浴槽にお湯を流しながらスポンジで洗う。次に床のタイルをブラシでゴシゴシ。カビが生えやすい目地もこする。洗い終わったらお湯をためて風呂に入る。たったこれだけ。
汚れが目立つようになってからまとめて一気に掃除するとなると、時間がかかり、どうしてもおっくうになる。風呂に入る前のわずかな時間を活用すれば、気持ちの上でも負担は軽くなる。汚れがたまることも減るから、掃除に時間がかからず、時短につながる。
この方法は妻に学んだ。妻にとっては、家事効率化というよりは、清潔な環境で子供を風呂に入れたいという気持ちからだった。いつも風呂掃除をしてから湯をくんでいる妻の後ろ姿を見て、「ああ、そうすると気持ちよく風呂に入れるんやな」と思い、まねるようになった。
風呂場に加え、洗面台の掃除もよくやる家事の一つ。
以前、テレビ番組に出演した妻が「夫のイヤなところ」というテーマで、こう話していたことがあった。「洗面台にヒゲそり後の残りかすが落ちているのがイヤ」
恥ずかしながら、妻がそう感じていたとは全く知らなかった。それどころか、ヒゲの残りかすがこぼれ落ちていることすら気づかなかった。
確かに朝、ヒゲそり前に電気カミソリの電源をオンにすると、内部に残っていた粉状のヒゲが、パラパラと洗面ボウルに落ちていく……。反省した。以来、気がついたらボウルや鏡の汚れをささっと拭くよう心がけている。
掃除は家事に取り組もうと考えている男性にとっては、入りやすい分野だと思う。汚れていた空間が、掃除をすると目に見えてきれいになる。一般的に物事に達成感を求める傾向が強い男性にとっては、満足度が高い。
ただ、完成度へのハードルを高く設定されてしまうと、やはりそこはつらい。多少、汚れが残っているところがあっても、大目に見て、進歩ぶりを見守ってもらえるとありがたい。
父親が掃除に取り組む姿は、子育てにもプラスになるのではないだろうか。
長男は、風呂に入る前に私がゴシゴシと床を磨いているのを、興味深げにじーっと見ている。そのうち、一緒に風呂掃除ができるのではないか。そんなうれしい予感もしている。
東京大学卒、通産省(現経済産業省)に入省。約10年務め退官し、2011年三重県知事に(現在2期目)。兵庫県出身、43歳。妻はシンクロナイズドスイミング五輪メダリストの武田美保さんで、現在2児の父。
[日本経済新聞夕刊2018年3月27日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。