変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック

「価格を上回る価値を伝えるため、使い方や他社商品との違いを徹底的に研究する」という桜井さん

「価格を上回る価値を伝えるため、使い方や他社商品との違いを徹底的に研究する」という桜井さん

小売店の販売促進に欠かせない実演販売。東急ハンズの池袋店(東京・豊島)でトラベル用品などを担当する桜井邦夫さん(63)は社内で「ミスター」の異名を取る実演販売のレジェンドだ。

「ストッパーが付いていれば坂道でもこんなふうに転がる心配はないですよ」。2月中旬、池袋店2階のスーツケース売り場に桜井さんの大きな声が響く。斜めになった台の上でスーツケースを転がしながら、ストッパーの重要性を解説する。身ぶり手ぶりも大きく、さほど関心のなさそうな来店客も思わず声の主に視線を投げ掛ける。

桜井さんの実演販売が社内に広く知れ渡るきっかけとなった商品は米国の高性能ミキサー「バイタミックス」。ショッピングセンター「ららぽーと豊洲」(東京・江東)に入る店舗から「まったく売れない」と応援を頼まれた。1台約8万円という高級品。「価格を上回る価値を伝えるため、使い方や他社商品との違いなどを徹底的に研究した」という。

実演販売ではまず、ミキサーがたてる大きな音、できあがったフルーツジュースの甘い香りで通りすがりの来店客の関心を集める。値札をみて「高いわね」と言われれば、「その通り」と素直に認めた。時間をかけた準備を成果につなげるための腕の見せ所はここからだ。

「リンゴの種もキウイの皮もまるごと入れて大丈夫。栄養は全て取れます」「私もこれを使い始めて体調が良くなりました」と矢継ぎ早に特徴を紹介。ここで試飲を促せば、十中八九、「おいしい」という答えが返ってくる。この先、機能に納得した消費者に購入を決断させるのは桜井さんの巧みな話術だ。

このとき、応援に出向いた4日間で売り上げたバイタミックスは16台。月に1台売れるかどうかだった店舗にとっては驚異的な数字をたたき出した「ミスターバイタミックス」は社内の語り草となった。

桜井さんの巧みな話術は日ごろの接客の中でも見て取れる。スーツケース売り場の来店客は大半が旅行や出張など用途がはっきりした目的買い。例えば、1週間程度の旅行であれば「大きさや重量で追加料金が取られますよ」「現地で洗濯できるなら着回したらどうでしょう」と提案しながら最適なサイズの商品を薦めていく。

新着記事

Follow Us
日経転職版日経ビジネススクールOFFICE PASSexcedo日経TEST

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック