『ボス・ベイビー』 兄弟の葛藤 王道のアニメ
「赤ちゃんなのに、おっさん!?」という宣伝文句から、際物かと思いきや、さにあらず。現代社会を鋭く皮肉りつつ、兄弟の嫉妬と葛藤という昔話の祖型をしっかり押さえ、王道のアニメ映画に仕上げている。
語り手は想像力豊かな7歳の少年ティム。両親の愛を一身に受けて育ったが、その幸福な日々は突然終わる。弟が生まれたのだ。
両親は気づかないが、ティムは知っている。この赤ん坊は怪しい。黒いスーツにネクタイを締め、ブリーフケースを携えている。昼夜を問わず、何かを要求し、みんな彼の言いなりだ。
疲れ切った両親が眠った夜、ティムは赤ん坊が電話で上司と話しているのを目撃する。赤ん坊は開き直る。「俺はボスだ」。コーヒーとすしを欲しがり、「ビジネスを学んだことがないようだな」と兄を見下す。
ボスは近所の子を集めて会議を開く。ティムと彼らの親はみなワンワン社に勤めている。ボスと子供たちはベイビー社から派遣されたらしい。ベイビー社は赤ちゃんを製造する会社で、ペット大手のワンワン社に脅威を感じている。赤ちゃんより子犬を愛する人が増え、市場を奪われているのだ。ボスの使命はワンワン社が開発中の新種の子犬の発売を阻止することだ。
ティムはボスの秘密をつかむが、誰も信じてくれない。ボスは新商品の情報が取れず、あせる。成果をあげられず、管理職を首になったら、普通の赤ん坊になって、この家でずっと暮らすことになる。それはティムもごめんだ。対立する2人は一転して協力。両親の仕事参観の日を利用し、ワンワン社に潜入する……。
繊細なティムの成長を丁寧に描いている。さらに生まれた時から仕事一筋のボスの孤独も。赤ちゃん工場は壮観で、自転車のアクションも痛快。子供も大人も楽しめそうだ。ドリームワークス・アニメーション作品。1時間39分。
★★★★
(編集委員 古賀重樹)
[日本経済新聞夕刊2018年3月23日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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