峠の釜めし、立ち食いそば… おいしい高崎駅へGO!
上越新幹線や高崎線など多くの路線が集中し、1日の平均乗車人数は約3万人という高崎駅(群馬県高崎市)は、北関東有数のターミナル駅。交通の要衝だけに駅弁の種類が豊富で、有名な「だるま弁当」など毎日36種類を販売する。多彩な駅弁に加え昔ながらの立ち食いそば店も健在で、知る人ぞ知る「おいしい駅」なのだ。
日本の駅弁は、1885年(明治18年)、宇都宮駅で竹の皮に包んだおにぎりを売ったのが最初というのが定説だが、高崎弁当の芝基紘常務(77)は「当社の創業は高崎線が開業した1884年(明治17年)。東北線の開通はそれより後なので、こちらのほうが古いのは確実」と異を唱える。
その高崎弁当が1934年(昭和9年)以来、販売するのが「鶏めし弁当」。当時のままの古風な掛け紙が今も使われている。高崎駅での駅弁販売を手がけるNRE高崎サービスによると、同駅での駅弁売り上げランキング第3位。地元で生産が盛んな鶏の照り焼きやそぼろが載った一品で、甘辛の関東風の味付けが印象的だ。
ランキング2位はおなじみの「だるま弁当」で、60年(昭和35年)の発売のロングセラー。竹の子など根菜が多いのが特徴で、高崎市内にある少林山達磨寺の「普茶料理」をベースにしてある。
そして、だるま弁当を抑えて僅差で売り上げトップに輝くのは「峠の釜めし」。信越本線横川駅の名物だが、2005年から高崎駅でも販売している。荻野屋の清水一民・販売部次長(43)によると「今では横川駅での売り上げはわずか。高崎や東京、軽井沢での販売が多い」。ゴボウ、竹の子、鶏肉など「里のもの」が具材の心温まる味わいだ。
隠れた名物になっている立ち食いそばも忘れてはいけない。「新幹線改札口にある『八起屋』は高級志向で生そば。それ以外の2店はゆでそばで、つゆの味も変えている」(運営するNRE高崎サービスの松本広光営業部長=42)。改札外にある「八起屋西口店」にはラーメンもある。
なかでも上野東京ラインが発着するホームにある「5号売店」は、今では珍しくなった吹きさらしの店舗で、いつもの立ち食いそばもひと味違う。「なつかしい雰囲気を求めて電車に乗ってわざわざ来てくれる人もいる」(販売員の森田俊子さん=68)という。
週末にSL列車が発車するのもここで、その時は21世紀とは思えない光景が出現する。3年ほど前にかき揚げを大量生産のものから駅構内の厨房で揚げるものに変えるなど、中身の改善も怠らない。
日本独特の鉄道文化とされる駅弁と立ち食いそば。この両方が充実した高崎駅を、乗り換えだけで通り過ぎるのはもったいない。
高崎駅の駅弁売店では売れ行きを見ながら追加発注しており、弁当の納入は1日8回。「こうすることで廃棄を減らせるし、遅い時間になっても欠品がなく品ぞろえがいい。普通の駅弁は1日2、3回だろう」(NRE高崎サービスの大家俊夫取締役=60)。「早朝から遅い時間までお客さんが絶えない」(販売員の横田きぬ江さん=62)背景にはこんな努力がある。
例外は「二日酔いの朝でも食べられるようにと開発した」という「上州の朝がゆ」。朝食専用で朝しか販売していない。
(前橋支局長 塚本直樹)
[日本経済新聞夕刊2018年3月15日付]
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