転ばぬ先のステキな杖 こだわりの1本で外出楽しく使い始めの目安は「階段に不安」

パーツを入れ替えてデザインを楽しむスケルトンのステッキも(千葉県船橋市の素敵屋Alook)

「素敵屋Alook(あるく)」(千葉県船橋市)はポリカーボネート製の透明なパイプにリボンやビーズ、造花などを詰めた独自開発の杖を販売する。パイプに入れるパーツは35種類あり、詰め替えが可能だ。

「若い人にも利用が広がっている」と小倉恵美子代表。病気で杖が手放せない30代女性は、小学生の娘から杖を持つ姿をはずかしいと言われて悩んでいた。同社の杖を使うようになり、娘が「ママ、かわいい」と喜んで一緒に出歩くようになったという。

多様な杖が手に入るとはいえ、杖デビューをためらう人はまだ多い。医師で日本転倒予防学会(東京・中央)の武藤芳照理事長によると、変形性関節症などで足が痛む人に杖を薦めても「そんな年寄りではない」「人目が気になる」などと拒む人が少なくないという。

早めに杖を使えば、痛みが軽減し、転びやすい状態を防げる。「杖は転倒予防に最適な道具。その効用を理解して」と力説。細かい文字が見づらくなって眼鏡をかけるのと同じ感覚で、杖を使ってほしいという。

使い始める目安は「片足立ちでバランスが取りづらくなったり、下り階段が不安になったりした時」(武藤理事長)。右膝が痛いのに杖を使わず歩いていると、左腰や右肩にも負担がかかる。転倒は骨折に加え、脳挫傷など頭に大けがを負うリスクをはらむ。厚生労働省の人口動態統計によると、2016年の転倒・転落による死亡は8030人と交通事故の5278人を上回る。

杖を選んだら、正しい使い方を守ろう。「大半の人は『痛い足をかばうために同じ側で持つ』と誤解している」と武藤理事長は指摘する。杖に体重を分散させるため、左脚が痛い人の場合は反対側の右手で杖をつくのが正解だ。

100円ショップでは杖を一本150円で販売している。ヒルトン東京(東京・新宿)内にある専門店「ステッキのチャップリン」には南米ギアナ産のスネークウッドで作った240万円の杖もある。相棒になる一本が見つかれば、より安全に、楽しく歩けそうだ。

◇  ◇  ◇

2本持ち 全身運動に

1本より安定感が増すと最近人気を集めているのが「2本杖」。ウオーキングポールとも呼ばれ、「じわじわ浸透している」(ファンタステッキの石井さん)。

埼玉県志木市は2014年から講習会を開いたり、同好サークルのリーダー育成に取り組んで市民の健康増進に役立てている。保健師で同市健康政策課の清水裕子副課長は「足と合わせて4点で体を支えて歩くと歩幅が広がり、歩行速度も上がる。背筋が伸びて姿勢が良くなるうえ、腕や肩甲骨など上半身も使うので、全身運動になる」と話す。

全身運動になるウオーキングポールは2本の杖を使う

定年後の男性が地域参加するきっかけになり、医療費削減効果が出ているそうだ。5月20日には4回目の「ノルディックウォーキング・ポールウォーキング全国大会」を市内の公園で開催。昨年の参加者は1054人と初回の約2倍に増えた。

(竹沢正英)

[日本経済新聞夕刊2018年3月7日付]

ウェルエイジング 健康で豊かな人生のヒント
注目記事
ウェルエイジング 健康で豊かな人生のヒント