肩甲骨、自在に動かし軽快に 冬のこわばり楽しく解消
タオルと棒使って体操
衣類を着込むため肩をすくめがちな寒い季節は、肩甲骨の動きが制限されやすい。鳥の翼のような自由自在な動きが、肩甲骨の本来の持ち味だ。冬の間に生じたこわばりを今から解消して、軽快な春を迎えたい。
肩甲骨は肩と腕をつなぐ役割を担い、鎖骨のみとつながっている。そのため上下左右、内外回旋の動きが可能だ。鳥の翼のように自由に動いて、私たちの日常の動作を支えている。
ところが肩甲骨周辺の筋群、特に肩甲骨を覆っている後頭下部から肩、胸椎までの「僧帽筋」と、僧帽筋の奥にある「肩甲挙筋」の過緊張や、運動不足が原因のこわばりがあると、自由度が制限される。
例えばスマートフォン(スマホ)やパソコンの長時間使用、編み物や縫い物など手先を細かく使う作業などで肩が凝るのは、親指の使い過ぎ(屈筋の酷使)が原因と考えられる。腕から肩の筋肉が硬く短くなり、肩甲骨が前方に引っぱられて、自由度が制限される。さらに、腕に向かう動脈と神経を圧迫し、痛みやしびれを招くこともある。
肩甲骨を動かさないことで生じる肩甲骨のズレやこわばりは姿勢を悪化させ、体のたるみや腰痛、基礎代謝の低下を招く。肩甲骨は適度に動かし、自由度を保つことが重要だ。
運動の前に、肩甲骨の位置と動きを認識しよう(写真上)。背中にタオルを斜めにあてがって肩甲骨を動かし、タオルに触れる様子を感じる。身体の部位を意識すると、運動の効果が得られやすくなる。
始めにタオルを両手で持ち、上下に動かす(写真上)。両手でタオルをピンと張り、鎖骨の下あたりにくるように肘を曲げてスタンバイ。腕を無理なく伸ばしながらタオルを真上に上げて、肩甲骨を意識して元の位置に戻す。10回ほどじっくり繰り返そう。
最初の姿勢に戻り、今度はタオルの片端を体の中心線よりも斜め上、やや前方に突き上げてから下ろす(同右)。前かがみにならない範囲で、腕をしっかり伸ばそう。左右交互に繰り返す。
次に、翼のイメージで腕を肩甲骨から動かす(写真上)。左手を左肩に添えて、肘で大きな半円を描くように、右の脇腹付近まで息を吐きながら動かす。続いて、肘を後方に移動する。息を吸いながら、肩甲骨と肘をできるだけ背骨に寄せるように弧を描く。右手も同様に、肘を左の脇腹近くまで動かす。前後5往復ずつ取り組もう。
最後は、棒を使う肩甲骨回し(写真上)。古新聞を細長く巻いて硬い棒状にする(体格に応じて長さ60~70センチメートル前後)。棒の両端に手を添え、片端ずつ前方に大きく回していく。パドリングのようにこぎ出すイメージだ。
慣れてきたら、棒を後ろに回してみよう。肩甲骨を背骨に寄せる働きが増して、肩甲骨の動きがより大きくなる。
肩甲骨を動かすと、周辺筋群が活発に収縮する。血流が促進され熱産量が増加し、冷え性の改善も期待できる。自分の肩甲骨を意識して、本来の自由度を取り戻してほしい。
(早稲田大学スポーツ科学学術院 荒木邦子)
[NIKKEIプラス1 2018年3月3日付]
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