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「おもちゃは楽しいが一番」と売り場に体験コーナーを設ける野中さん

売れ筋を予測して商品をそろえ、消費者がつい足を止めてしまう仕掛けをつくる。小売店の基本は玩具売り場にも当てはまる。イトーヨーカ堂で玩具・文具売り場を担当する野中淳治さん(43)がつくる売り場には競合店にはない商品が多く並び、子供が楽しいと感じる演出が随所にある。

セブン&アイ・ホールディングスが運営するショッピングセンター(SC)「グランツリー武蔵小杉」(川崎市)。4階に入る「イトーヨーカドー」の玩具売り場の一角に子供たちのにぎやかな輪ができる。

輪の中心には鉄道玩具の「プラレール」などがあり、手に取って遊ぶ子供たちには笑顔が絶えない。「休日は一日中、売り場から離れない子供も多い」。この体験コーナーをつくったのが野中さんだ。子供たちを売り場に呼び込み、とどまらせる仕掛けとなっている。

「おもちゃ売り場は楽しいことが一番大事」を信条とする野中さんの楽しさの演出は体験コーナーに限らない。売り場の3分の1を割く催事コーナーでも仕掛ける。展開するのは公開中の映画に関連した玩具など今が旬の話題性のある商品だ。子供たちの興味が高まるタイミングを見計らい手を打つ。

例えば、17年7月から9週間はディズニーのアニメ映画「カーズ」にちなんだ催事を展開。売り場には関連グッズを集めるほか、様々なメーカーがカーズを題材に企画した販売促進も紹介した。

1998年のイトーヨーカ堂入社から約20年、5年間のバイヤー経験も含めて玩具一筋だ。

子供相手となる玩具はトレンドの変化が早い。情報収集のため、毎シーズン5~6本の子供向け番組を録画し、チェックする日々が続く。最近は動画共有サイト「ユーチューブ」で子供に人気のある動画のチェックも欠かさない。仕入れた情報はすぐ、品ぞろえや売り場づくりに反映する。

「子供向けならではの難しさもある」(野中さん)。例えば、17年4月発売の女児向け戦隊キャラクターの商品が11月まで、武蔵小杉店では「まったく売れなかった」。12月に入ると一転、電話での問い合わせが相次ぐようになり、最終的には月間10個を売り上げた。

なぜなのか。野中さんは「サンタさん待ちだった」と分析する。12月にいきなり売れた商品は価格が8000円近く、玩具としては比較的高い。売り場に来るたびに欲しいと思っていた子供たちがクリスマスを待っていたという解釈だ。

動きの鈍い商品を売り場に置き続ければ、効率は悪い。しかし、足元の売れ行きや競合店の品ぞろえを基準に売り場をつくれば、「サンタさん待ち」のようなニーズは逃してしまう。「他の店で売っていない商品だったからこそクリスマス需要を取れた」と野中さんは話す。17年12月の武蔵小杉店の玩具・文具の売上高は前年同月比25%増と好調だった。

予算や人の管理など売り場を統括するマネジャーとしての業務を抱えていても「99%は売り場にいる」という野中さん。子供や親の様子をよく観察し、パートの社員とも話し合う。興味の移ろいが早い子供向けだからこそ、わずかな変化も逃さず感じ取る姿勢を貫く。

(今井拓也)

[日経MJ2018年2月26日付]

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