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遠隔診療、普及に向け実験加速 生活習慣病を指導

2018/2/12付 日本経済新聞 朝刊

遠隔診療が役に立たない場合は、ある程度はっきりしているようだ。本間氏によると、患者の行動変容の段階には5つの段階がある。6カ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思のある「第2ステージ」以上の患者は改善を促しやすい。

だがそもそも行動変容の意思がない「第1ステージ」の患者の生活習慣を改善させるのは難しい。これは遠隔診療でも変わらないわけだ。

ウェルビーなどは実証試験の結果を踏まえ、今後さらなる臨床研究も検討する。患者に医療行為にあたる指導をする介入群と、指導をしない非介入群とに分け、厳密に治療効果を測る。

テレビ通話で患者を診察するMRTの「ポケットドクター」(神奈川県海老名市)

MRTは北海道苫小牧市にある植苗病院と組み、18年2月から実証試験を始める。高血圧や糖尿病の患者約10人の再診を対象に、約半年実施する予定だ。

患者は同社の提供するアプリ「ポケットドクター」を使い、テレビ通話で医師とやり取りする。患部の拡大写真を医師に見せたり、医師が画面上に赤線を描いて指示を与えたりできる機能がある。このアプリはすでに全国で400件以上の導入実績があるという。

■「オンライン」新設

実証試験の対象地域には病院が少なく、冬場は積雪で通院しにくい。実証試験では、遠隔診療で患者が定期的な診察を受けやすくなるかを検証する。

従来の制度では遠隔診療の診療報酬は低く、対象範囲も限られた。病院は1回720円の電話再診料と呼ばれる分しかもらえず、専門医が勤務するような200床以上の大病院は制度の対象外だった。

このほど決まった18年度の改定では「オンライン診療料」などが新設され、病院側は計1700円を受け取れるようになる。ただ定義し直された電話再診料と新設のオンライン診療料とのすみ分けが不明瞭だという指摘もある。

MRTメディカルコンサルティンググループの落合宏明部長は「難病や希少疾患など専門医が近くにいないような疾患こそ、通院の困難を遠隔診療で支援する必要がある」と強調する。

各社は実証実験などを通して実績を作り、遠隔診療の普及や、さらなる診療報酬改定などに向けた後押しをする狙いだ。遠隔診療が広まれば、各社のシステムの普及にもつながる。利便性を訴えるだけではなく、医療費抑制につながる効果を示そうとしている。

調査会社の矢野経済研究所(東京・中野)によると、遠隔診療と関連システムなどを含む国内市場は、19年度に199億円になると見込まれる。診療報酬の改定によって市場がさらに拡大する可能性もありそうだ。

◇  ◇  ◇

■「離島など限定」→次第に範囲拡大 SNSも利用可能に

遠隔診療の対象範囲は従来、厚生労働省の通知の中で例示した特定の疾患や、離島やへき地などに限られると解釈されていた。転機は2015年8月で、厚労省は通知で示した疾患、離島やへき地は例示にすぎないという事務連絡を出した。これが事実上の解禁と受け止められ、遠隔診療関連のスタートアップが相次ぎ参入した。

厚労省は17年7月には患者の心身の状態について有用な情報が得られることを条件に、テレビ通話や交流サイト(SNS)も利用できると範囲を明確にした。ただ、現行制度では対象患者は実質的には再診以降に限られ、外来患者の対面診療に比べて診療報酬は低くなっている。

例えば、テレビ通話などを駆使した遠隔診療サービスの利用料は病院側が企業に支払う。月額3万円程度のサービスが多い。遠隔診療の診療報酬から利用料以上の収入を得るには1日1~2人の患者を診る必要がある。医師の人件費を考慮すると、さらに多くいる。

18年度の診療報酬改定では、オンライン診療料などが新設された。例えば、生活習慣病で毎月外来を受診する場合、ある月は対面、別の月は遠隔と組み合わせて受診できるようになる。

(川上宗馬)

[日本経済新聞2018年2月12日付]

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