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「帰りたい」→「誰に会いに?」 認知症介護の対話法 大切なのは、行動の根底にある「思い」探ること

2018/2/7付 日本経済新聞 夕刊

 夜中に歩き回る、食事や入浴を拒む、幻覚や妄想を訴える――認知症高齢者が繰り返す様々な行動が、介護施設などで問題視される例は枚挙にいとまがない。受け入れの継続が困難とほのめかされて、困惑する家族も。最近はコミュニケーション技法を導入して、改善を促す施設や病院が登場している。

 「認知症の夫が『夜中に歩き回り、職員が疲弊している』と入居先に言われて、別の施設を探さざるを得なくなった」と語るのは名古屋市に住むFさん(80)。

 グループホームなどの介護施設は、ケアが難しくなった利用者の退去を求める際は他の施設や病院を紹介するよう自治体のガイドラインが定めている。施設側が利用をはっきり断る例はまれだが「他の利用者が迷惑している」「職員が疲弊する」といった遠回しな表現で伝えてくることが多い。

 困ったFさんはケアマネジャーに相談。介護サービス事業のエル・シー・エス(名古屋市)の、介護施設併設のサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に夫(83)を託した。

バリデーションでは視野が狭くなっている認知症高齢者と真正面で向き合う

 同社は他の施設で「ケアの継続が難しい」とされた認知症高齢者を、サ高住やグループホームなどで積極的に受け入れている。現場では「バリデーション」と呼ばれるコミュニケーション技法を実践。言葉での意思疎通が難しい利用者に対し、非言語のコミュニケーションと傾聴を併用する。

 施設での認知症高齢者の「問題行動」はこれまで、抑え込む対象と見なされてきた。高齢者が「家に帰りたい」と訴えても、はぐらかすのが一般的。バリデーションの技法では「家に帰って何をするのですか」「誰が待っているのですか」などと話を進める。

 肩や手に触れながら話したり、正面に座り向き合って高齢者の表情を再現したりして、訴えの背後にある思いを語るよう働きかける。精神安定剤などにはほとんど頼らず「行動・心理症状(BPSD)」を解消しているという。

 施設を移ったFさんの夫は「家族を守るため働き続けてきたのに、急に病人扱いされてつらかった」と打ち明けた。以来、問題なく共同生活を続けている。

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