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「帰りたい」→「誰に会いに?」 認知症介護の対話法 大切なのは、行動の根底にある「思い」探ること

2018/2/7付 日本経済新聞 夕刊

バリデーションに詳しい関西福祉科学大学社会福祉学部の都村尚子教授は「認知症高齢者が繰り返す行動の根底には、思いがうまく伝えられないもどかしさがある」と解説する。

スタッフがバリデーションを実践する病院も登場した。その一つ、さくら会病院(大阪府大阪狭山市)の笹山久美代看護部長は「認知症高齢者の人生の歩みを看護師が尊重するようになった」と語る。その結果、患者とのやりとりが円滑になり、「困った行動も少しずつ減った」。

医療や介護の専門職がユマニチュードの研修で体位交換の手法を学ぶ(東京都目黒区の国立病院機構東京医療センター)

「介助を拒むのは、高齢者の防御姿勢の表れ」と語るのは、フランス発の介護技術「ユマニチュード」の普及に取り組む、国立病院機構東京医療センター(東京・目黒)総合内科医長の本田美和子氏。視線や言葉、触れる技術などを総動員して「あなたを大切に思っている」と相手に理解できる形で伝える。介護職員や看護師に広がり始めた。

これらの技法の習得には専門の研修が必要だが、都村教授は「介護する側がその考え方を踏まえて相手に寄り添うだけでも、認知症高齢者の言動は驚くほど変わる」と語る。公認日本バリデーション協会(仙台市)は一般を対象に2日間の入門研修を実施。東京医療センターはユーチューブの「高齢者ケア研究室チャンネル」でユマニチュードの家族向け動画を公開している。

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■「適応できない」サイン

認知症高齢者の中には、周囲を困らせる行動が理由で介護施設の利用が難しくなり、精神科病院に入院するケースもある。ただ精神科医で千葉大学医学部付属病院地域医療連携部の特任准教授、上野秀樹氏は「精神科病院への入院は認知機能や身体機能の低下を伴うことが多く、症状の改善に逆効果になることもある」と指摘する。

精神科では行動・心理症状(BPSD)を薬物療法などで取り除こうと試みることが多い。上野氏によるとBPSDは「周囲の環境に適応できないことを訴えている状態」。施設などがコミュニケーション技法を採用する動きについて「『問題行動』と見なさずに、認知症患者の隠されたニーズを示す貴重なサインだと受け止める」観点から歓迎するという。

「認知症の症状改善には、住まいに近い生活環境で過ごすことが最も効果的。工夫をすれば、BPSDがあっても地域で支えることは十分可能」と強調する。

(相川浩之)

[日本経済新聞夕刊2018年2月7日付]

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