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国連の開発目標になぜ注目? 持続性を重視

2018/2/5付 日本経済新聞 夕刊

ジャパンSDGsアワード表彰式で本部長賞を受けた北海道下川町の谷町長(左)にトロフィーを手渡す安倍首相。右は推進大使のピコ太郎さん

 最近、「持続可能な開発目標(SDGS)」という言葉をよく目にするわ。世界をより暮らしやすくするための取り組みのようだけど、うまくいくのかな。私たちの生活にはどう影響するの。

 「持続可能な社会」への取り組みについて、神野美保さん(53)と松田正子さん(63)が前田裕之編集委員に聞いた。

――SDGsはどうして注目されているのですか。

 SDGsは英語のSustainable Development Goalsを縮めたもので、国連が2015年9月、15年後の30年を期限とする持続可能な開発のための目標として採択しました。国連は今から30年以上前の1987年、「環境と開発に関する世界委員会」の報告書の中で持続可能な開発という考え方を示しました。

 一般的に、sustainableという単語はsustainable city(環境への影響に配慮した都市づくり)というように、環境や資源に配慮したという意味をつけ加えるために使います。将来のための地球環境の保全、未来の子孫の利益を損なわない社会という視点が新しかったといえます。

 最近SDGsが注目されるのは、世界各地で自然災害や温暖化などに歯止めがかかっていないためです。SDGsの17の目標に雇用や消費といった課題が盛り込まれた結果、先進国の人々にとってもより身近な問題としてとらえられる内容になっています。

――日本政府はどのように対応していますか。

 日本はSDGsの策定時、教育やインフラを目標に入れることに成功しました。16年5月には安倍晋三首相をトップに推進本部を設け、同12月に実施指針をつくりました。 国内と国際協力の両面について、政府主導で活動する考えです。SDGsの目標である働きがいのある雇用は、政権の進める「働き方改革」の実現へ落とし込むなどしています。災害に強い国づくりを目指す「国土強靱(きょうじん)化」はSDGsとどう調和するかといった疑問もありますが、SDGsに熱心といえるでしょう。

――ESG投資という言葉もよく目にしますが。

 株式市場でも環境(Environment)と社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮した企業へのESG投資が話題になっています。例えば環境では二酸化炭素(CO2)の削減、社会は女性の活躍度、企業統治は社外取締役の多さに注目します。

 ESG投資にも、国連が関わっています。06年、投資家に対し環境や社会に配慮した投資を促す「責任投資原則(PRI)」を公表しました。08年の金融危機は、目先の利益を追求した金融機関が起こしたとの反省から、PRIへの同意が広がります。署名した機関投資家はすでに、世界で1800以上、運用資産の総額は約70兆ドル(約7600兆円)に達します。

 日本でも、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が15年に署名しました。GPIFは17年、日本株の3つのESG指数を選定して投資を始めました。当初の1兆円規模から、中長期で投資額を拡大していくようです。

――私たちの生活にはどう関わってきますか。

 ESG投資が広まると、上場企業は投資してもらうためにESGに力を入れることになります。不正会計などESGに反する動きをすれば、株価急落や業績悪化にもつながります。非上場企業でも、上場企業と取引があればESGに配慮するようになるでしょう。被災地の支援や植樹といった本業とはつながりが薄い、従来の企業の社会的責任(CSR)活動も大切ですが、本業と結びついた活動は増えるはずです。

 消費者も、持続的な成長を心掛ける企業から、商品やサービスを受けたいと考えるのではないでしょうか。ESGに熱心な企業で働いてみたいという人が増えるかもしれません。企業も最近は財務諸表と合わせ、SDGsと関連づけた目標をどの程度達成できたかという報告書を公表しています。持続可能な社会を目指す動きは確実に浸透していきそうです。

■ちょっとウンチク

「異端」の経済学に再評価

 「持続可能性」を重視する世界の潮流は、経済学界にも影響を及ぼしている。19世紀の英国の経済学者、ジョン・スチュアート・ミルの「定常状態」論を再評価する動きはその一つだ。ミルは経済成長が続くと自然と人間が共生できなくなると予測、「資本と人口は一定で、人間の教養や道徳の進歩が続く状態」を理想とした。

 ミルの影響を受けたハーマン・デイリー米メリーランド大名誉教授は「自然資本」の概念を掲げ、1970年代以降、「エコロジー経済学」の体系ができた。長らく「異端」の扱いだったが、今、ミルの問題意識を異端と片付けるのは難しい。

(編集委員 前田裕之)

■今回のニッキィ
松田 正子さん 臨床心理士。週に1回、スポーツクラブでのヒップホップなどのダンスで体を動かす。「インストラクターから習った振り付けの通り踊れた時の達成感が、くせになります」
神野 美保さん 主婦。日本で暮らす外国人から、それぞれの地域の料理を学んでいる。最近はアゼルバイジャンのピラフをつくった。「目新しい食材を使い、食べると世界観が広がります」

[日本経済新聞夕刊 2018年2月5日付]

「ニッキィの大疑問」は原則月曜更新です。

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