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諏訪監督、名優レオーと新作 映画の喜び 子供に学ぶ

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NIKKEI STYLE

諏訪敦彦監督がヌーベルバーグの名優ジャン=ピエール・レオー(73)を主演に迎え8年ぶりの新作を撮った。老優が知る人生の輝き。それは諏訪が子供映画教室の体験で得た光でもある。

画面のすみずみまで光が満ちている。諏訪敦彦(のぶひろ)の新作「ライオンは今夜死ぬ」(公開中)は、死を演じる老優ジャン(レオー)が南仏の古い屋敷で若き日の恋人の幽霊に出会う物語。屋敷に撮影に来た映画教室の子供たちと過ごす老優は、死の淵に立ち、生きる喜びに目覚める。その明るさは、人物が暗い陰に隠れていた「2/デュオ」など諏訪の初期作品と対照的だ。

全てを見渡さない

「全てを見せる必要はないという覚悟が『2/デュオ』からあった。話者が全てを知るバルザックでなく、世界はわからない、私は知らないというカミュのように、作者が全てを見渡す立場に立たない。それが現代映画の条件だと思う」

新作は逆に色々なモノが見える。陽光の中の幽霊、街を歩くライオン……。

「ただ、それらはある人だけに個別に見えている。全体を見渡す視点はない。僕が作者として全てを理解し、統括しているわけでもない。様々な視点が複合的にこの映画を作っている」

諏訪作品には完成台本がない。今回も子供たちの場面はすべて即興だ。諏訪は子供に映画を作れと指示したが、どんな話し合いをし、どんな映画を作るかは子供に任せた。だからレオーと子供の会話も即興。諏訪は8年前から金沢や横浜で講師をした「こども映画教室」の体験が大きいという。

「子供が撮った映画は、僕が撮った映画じゃない。でも自分が関与したのも事実。彼らの作品だが、自分の作品という思いもある。同じようにこの映画は色々な人に委ねられている」

それはミハイル・バフチンがドストエフスキーの小説世界を評した「カーニバルの形式」に通じるという。

「そこには演者と観客の区別はない。演出家もいない。日常的な時間が止まり、ヒエラルキーがひっくり返る。この映画の子供たちやジャンも同じで、常識的な世界からはみだしている」

「それは子供の遊びのようなものだ。遊びに目的はない。ただ楽しいからやっている。ゴダールの助監督は観客に『どうか皆さん、子供が見るように映画を見てください』と呼びかけたそうだ。ゴダールはずっとそんな映画を作っている」

「年をとった役」

フランスの映画祭でレオーと出会ったのが発端だ。

「ずっと映画でレオーを見てきたが、本人に会ってもやっぱりレオーだった。レオーは何を演じてもレオー。普通の役者は嘘を本当と信じさせるが、彼はしない。映画が嘘だということをあらわにし、虚構と現実の際を生きる。だからヌーベルバーグが映画を虚構から現実の世界に開いていった時代に存在感を出せた」

ヌーベルバーグは遠くなり、レオーの出番も減った。

「彼は映画の変革と共に存在した。彼が存在する映画を今、成立させたかった」

「どんな役をやりたいか」と諏訪が問うと、レオーは「年をとった役」と答えた。

「彼はこれまで年寄り役を演じた意識がなかった。だけど彼の身体は消耗している。映画とは死にゆくものを映すもの。ただ僕たちは生きることをたたえたかった。生が危機にさらされた時、人は生を実感する」

諏訪自身も「ただ楽しいから映画を作る」映画教室の子供たちから光を得た。

「この映画は明るい、と言われるが、それは子供と一緒に映画を作ったからだ。今の世界はすぐ意味や意義を求めるが、ただ映画を見ること、作ることは楽しくないか?」

何もかも意義付けないと安心しない時代を憂う。

「芸術はそれと反対のことをやるわけです。いかに人を不安にさせるか。あなたが見ている世界は本当の世界ですか? それを突きつけるのが芸術の役割だ」

諏訪の映画教室にも脚本はない。監督、撮影、俳優などの役割も決めない。昨年の教室で中学生が撮った作品を「美しい」と思った。

「登場人物が自分で考えて、自分で動いている。彼らはこの映画に何が必要で、何を演じればいいかがわかっている。これは上意下達システムの普通のプロの映画では起きない」

(編集委員 古賀重樹)

[日本経済新聞夕刊2018年1月22日付]

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