トラベル

旅グルメ

出雲特産、十六島のり 日本海の荒波が育てる高級品

2018/1/18付 日本経済新聞 夕刊

「十六島のりの良さを引き出したい」と考案された日本料理花びしの「薯蕷饅頭」(島根県出雲市)

 島根県出雲市特産の「十六島(うっぷるい)のり」は12~2月にだけ採れる高級岩のりだ。9割が県内に出荷され、県外ではなかなか味わえない。日本海の荒波の中で育ち、磯の風味が際立ってシャキシャキとした歯応えが特徴だ。地元では正月の雑煮の食材などとして重宝される。

「のり島」と呼ばれる岩場で、のりをはぎ取っていく(出雲市十六島地区)

 採れる場所は市北部の海岸にある十六島地区。押し寄せる高波と、のりのぬめりで転倒しやすい「のり島」と呼ばれる岩場で、地下足袋をはいた女性たちが身をかがめのりをはぎ取る。採取場は海面に向け傾斜しており、波にのまれる可能性もある危険な作業だ。生産者は20軒以下で、年間生産量は1トンに満たない。

 地元の出雲市でも食べられる店は限られる。一畑電車の雲州平田駅近くにある郷土料理店、日本料理おかやではコース料理の1品で「十六島のりとアマダイの炊き込み御飯」を提供する。2代目店主、岡成祐さん(36)の父、岡正次さんが2006年に試行錯誤の末作りだしたオリジナルメニューだ。のりの香りがアマダイの持つ甘みを引き立て、地元特産の巻き貝「ベベガイ」のだしで炊き込んだご飯とよく合う。成祐さんは「旬の今にこそ味わってほしい当店自慢の料理」と胸を張る。

 JR西出雲駅北口から徒歩7分の会席料理店、日本料理花びしで味わえるのは「蒸物 薯蕷饅頭(じょうよまんじゅう)」。コース料理の1品で、店主の木村均さん(70)が「島根ブランドである十六島のりの良さを存分に引き出したい」と考案した。すり下ろした山芋でエビ、キクラゲ、ギンナンなどを包んで蒸した薯蕷を、十六島のり入りのくずあんで味わう。ふんわりした山芋と濃厚な十六島のりの組み合わせは絶妙だ。

日本酒をかけてあぶった「十六島岩のり」

 おかやや花びしでの食事は予約が必要。手軽に食べたい人には浜山公園近くにあるそば店、そば縁がお薦めだ。今の季節なら「十六島海苔(のり)釜揚げそば」が食べられる。釜揚げそばは、ゆでたそばを水洗いせずゆで湯ごと丼に盛る出雲地方名物のそば。そこに濃厚なそばつゆを直接かけ、好みの味にする。そばの上の十六島のりの歯応えと、殻のついたそばの実をそのまま製粉して作る出雲そば独特の食感に舌鼓を打った。

 通販で買える生の十六島のりは30グラム入りで4000円程度。1000円程度で買いたいなら、日本酒をかけてあぶった「十六島岩のり 焙(あぶ)り」(7グラム入り)がいい。サクッとしており、おつまみや、お茶漬けの具として楽しめる。松江市の島根県物産観光館などで手に入る。

<マメ知識>奈良時代から貢納品
 十六島のりの歴史は古い。733年に成立した「出雲国風土記」にも記述がみられ、奈良・平安時代には貢納品として朝廷に納められた。江戸時代には松江藩が幕府に献上していたほか、全国各地の著名人への贈答品として珍重された。
 「うっぷるい」という珍しい地名の語源にはさまざまな説がある。出雲市などによると、のりをはぎ取り、露を打ち振るって日に乾す「打ち振り」という作業名がなまったという説のほか、朝鮮語やアイヌ語由来という説もあるという。

(松江支局長 西村正巳)

[日本経済新聞夕刊2018年1月18日付]

トラベル新着記事

ALL CHANNEL