アート&レビュー

映画レビュー

『ライオンは今夜死ぬ』 老優と子供 人生の輝き

2018/1/12付 日本経済新聞 夕刊

 前作「ユキとニナ」に続く8年ぶりの諏訪敦彦監督の新作。南フランスを舞台に、映画撮影にきた老いた俳優と映画制作を楽しむ子供たちとの交流を通して、現在と過去、生と死を問いかけつつ、人生の輝きをやんわりと描き出している。

 主人公の老優ジャンを演じるのは、往年のヌーベルバーグのアイドル、ジャン=ピエール・レオー。その存在感には圧倒されるが、映画はまさにレオーの存在ありきで展開される。「ママと娼婦」で彼と共演したイザベル・ヴェンガルテンがカメオ出演するなど、映画の記憶がちりばめられていて面白い。

 物語は、ジャンが撮影でいかに死を演じるかと悩むことから展開する。ジャンは撮影中断の合間、今は亡き昔の恋人が住んでいた古い屋敷を訪ねる。すると恋人のジュリエット(ポーリーヌ・エチエンヌ)が当時の姿のまま現れ、彼は記憶と幻想の中で、生と死の思いに耽(ふ)ける。

 そんなジャンの物思いを中断させるのは、町の子供たち。彼らは映画館の映写技師の指導で制作する映画を、この古い屋敷で撮影しようとしていた。初めはジャンを邪魔者扱いした子供たちだが、彼が俳優と知って映画に出演してほしいと頼み込む。

 この子供たちの映画作りには、監督が参加した子供の映画制作ワークショップの経験が反映している。わが国でも映画教育の試みが増えてきたが、その点でフランスは先進国である。そんな子供たちの生き生きとした映画作りを物語に巧(うま)く溶け込ませている。

 その子供たちを教える映写技師役のアルチュール・アラリは「汚れたダイヤモンド」の新進監督。彼の実兄であるトム・アラリによる映像が何とも素晴らしいが、子供たちの一人、ジュールが林や街で出会うライオンのシュールで幻想的なイメージが魅力的である。1時間43分。

★★★★

(映画評論家 村山 匡一郎)

[日本経済新聞夕刊2018年1月12日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…

アート&レビュー

ALL CHANNEL