節分の豆まき、マンションでの作法は?
鬼退治 小袋の豆爆弾なら汚れず楽ちん
もうすぐ節分。思いっきり豆をまいて鬼退治をしたいところだが、マンションやアパートなど集合住宅に住んでいる場合は、周りの迷惑にもなりかねない。住宅事情に合わせて豆まきを楽しむ方法はあるだろうか。
「管理人さんに怒られたんですよ」。東京都内のマンションに住むAさんは話す。節分でまいた豆が玄関前の廊下に散らかったのを注意された。掃除はしたのだが、夜だったので見落とした豆が残っていた。以来「豆まきは扉をしっかりと閉めてやるようにしている」という。
生活情報サイト「知りたい情報まるごとナビ」を運営する波多野佐和子さんは「集合住宅での豆まきは、住んでいる地域と近所付き合いによって、どの程度許されるか決まってくる」と話す。「一般的には、地方では迷惑にならない範囲で外に豆まきしてもOKなことが多く、都市部では外や共用部分への豆まきは控えた方がいい」
都市部では隣近所との付き合いもあまりないことが多いため、「ちょっとしたことで住民間のトラブルになりかねない」。日ごろから挨拶をしたり、町内の行事に協力するなど「ご近所さんとの関係をうまく築いておきつつ、豆まきは自分の部屋の中でやるのが無難」と勧める。
伝統行事に詳しい国学院大学の新谷尚紀教授によると、豆まきが習俗として定着したのは室町時代。節分の夜に、炒(い)った大豆の福豆をまいて鬼を追い払い、自分の年の数だけ豆を食べるという「家族で楽しめる季節の行事」として、現在も続く。
典型的なやり方は、窓や扉を開け、外に向けて「鬼は外」と豆をまき、鬼が入ってこないように戸を閉めてから、家の中に向かって「福は内」と豆をまく。地域や家庭によってそれぞれのやり方があり、「正式なまき方というものはない」(新谷教授)。伝統行事とはいえ、やり方をアレンジしても構わないのだ。
実際にマンションやアパートでの豆まきはどうすればいいのか。窓や玄関は閉めて豆が室外に飛び出さないようにしたうえで、奥の部屋から玄関に向かって「鬼は外」と順番に豆をまく。その後「福は内」と室内にまく、というのが一般的だ。夜だと音が響くので、午後8時くらいをめどに終わらせるとよい。
鬼門や方角が気になる人もいるかもしれないが、新谷教授によると「鬼を外に追い出せばいいのだから、方角はまったく気にする必要はない」という。自分の部屋のベランダ内ではまいてもいいが「その際はそっとまく程度にする」(波多野さん)。外へまくのは禁物だ。
ただ、外に向かって豆をまかないと感じが出ないという人もいるだろう。その場合は「エア豆まき」という手がある。ブログ「まいにち楽しく」で、暮らしに役立つ情報を発信している主婦の藤森めぐみさんは「『窓の外に鬼の気配が』という設定にして、子どもといっしょに外に向かって『鬼は外』と言ってまくまねをする」という。
後片付けも肝心。室内でまくと豆が家具の隅に入るなどして、掃除が大変だ。特に小さな子どもが豆をまくと、あちらこちらに飛び散らかして収拾がつかなくなる。豆が散らかるのを防ぐにはどうしたらいいか。
一つは袋に小分けにした豆を使う方法。ひとつまみをラップでくるんでもいい。「掃除が簡単で、無駄にせず食べられるのでお勧め」(波多野さん)。小袋を「豆爆弾」に見立ててまくと子どもも喜び、盛り上がる。
もう一つが落花生を使うやり方。「殻付きなので、まいた後に食べるのに抵抗がない」(藤森さん)。「北海道や東北地方などは30年くらい前から落花生を使っている」(新谷教授)といい、保育園や幼稚園の節分でも落花生を使う例が増えている。
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気軽な恵方巻きが定着
節分に、縁起がよいとされる方向を向いて太巻きを丸かじりする「恵方巻き」をする人が増えている。恵方巻きを食べる習慣は大阪で生まれたとされ、1990年代後半にコンビニエンスストアが商品化したのをきっかけに、新たな節分行事として全国に広がった。
アサヒグループホールディングスお客様生活文化研究所のインターネット調査(2015年1月、20歳以上の男女約760人を対象)によると、節分で豆まき以外にやる行事として「恵方を向いて太巻きを丸かじりする」との回答が約40%に達した。近所に迷惑をかけないうえ、子どもがいない家庭でも気軽にできる年中行事として高い支持を集めている。
(大橋正也)
[NIKKEIプラス1 2018年1月13日付]
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