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何気なしに発した自分の言葉に予想外のネガティブな反応があり、驚いたことはないだろうか。最近は、言葉を発信するのも探すのもインターネットから気軽に行える。悪気はなくとも誰かを不快にさせるのは避けたいところ。「正直」「本音」の伝え方のさじ加減はどんなものか、ポイントをまとめた。

ブログやSNSに想定外の厳しい反応が来ることは珍しくない

ブログやSNSに想定外の厳しい反応が来ることは珍しくない

「最近、ブログを書く時に慎重になった」。都内で商社に勤務するA子さんは話す。好きな俳優の新しい髪形が面白いと書いたら、面識のないファンから「不愉快です」とのコメントが付いた。悪意は全くなかったため、予想外の反応に落ち込んだ。

仕事でも、正直に発した言葉が相手を不快にさせる場合がある。ビジネスインストラクターの鈴木真理子さんは「客や案件によって優劣をつけていると取られる発言は危険」と話す。約束の日時を変更したい時、たとえ事実でも「別のお客様から食事に誘われて」などと話すのは控えた方がいい。

「良しあし」を押しつけない

話題選びも大切だ。絶対に避けたいのは業務上で知った個人情報を会話に盛り込むこと。鈴木さんは印鑑証明書を見たらしい郵便局員から「同い年ですね」とうれしそうに話しかけられ、不快に感じた経験があるという。

「話す前に注意が必要なテーマは5つある」。そう話すのは、「『選ばれる人』はなぜ口が堅いのか」(プレジデント社)の著書を持つ広報のエキスパート、大谷恵さんだ。

5つとは、し(宗教や思想)、た(宝や財産)、か(家族)、せ(政治や経済や仕事)、よ(良しあし)。頭文字から大谷さんは「舌、かせよ」で覚えている。

どれかに該当する場合、発言する前に「本当に言うべきか」などを一瞬でも考えることで、大きな失敗は防げると大谷さんは話す。

特に「良しあし」には気をつけたい。自分の発言内容は良しあしのどちらを指しているものなのか、相手はどちらと捉えるか。そこを意識すれば言い方も変わってくる。特にネット上の発言は、文脈を無視して一部だけを切り取られることも多い。良しあしを入れる入れないに関わらず、「迷ったら書かないのが賢明」と大谷さんは助言する。

ネットでの発言を見ているのは個人だけではない。転職サイト「リクナビNEXT」編集長の藤井薫さんは、企業が就職希望者のブログやSNS(交流サイト)を見る傾向は高まっていると話す。「公序良俗に反する内容や感情に任せた批判は避けた方がいい」と藤井さん。

感情的にならずに説明

面接も正直さのさじ加減が問われる。例えば前職を辞めた理由を聞かれた場合、「感情的にならず合理的に説明できることが大事。他者や環境のせいにすることは避ける。入社後また同じことをする人と思われる」(藤井さん)。

適性検査で素直に性格を出すべきか隠すべきかで迷う人もいるだろう。しかし「正直な自分を見せずに入社してもいばらの道になる」。リクルートキャリア(東京・千代田)が運営する就職みらい研究所所長の岡崎仁美さんはそう話す。

「回答がブレると、ウソをついている可能性ありと結果に出てしまう。別人格になりきっても、入社後ずっと偽り続けなければならない。果たしてそれが幸せだろうか」と岡崎さんは問う。

商社と銀行では別の人物を演じるべきかなど、こうした議論は就活生の集まる掲示板で白熱するが、最終的には正直であるべきだという結論に落ち着くという。社会人にも無関係な話ではない。

表に出すべき正直と出さなくていい正直がある。それを見極めるため、大谷さんはモヤモヤしたことがあると、Fact(事実)、Feeling(感情)、Future(未来)の3つのFを軸に、思ったことを紙に書き出す。どんな出来事があり、それを自分や相手はどう感じ、未来にどんな影響を及ぼすか。そうすることで「自然と気持ちが収まり、言うべきかどうかが見えてくる。実はFactを把握できていないと気付くこともある」(大谷さん)。

ツイッターで文章を書く際も、一度冷静に振り返り、気になった時は「これは言わなくていいな」と削除するか下書き保存するのを習慣にするといい。瞬時に発信せず一拍おいて質の高いコミュニケーションを取りたい。

(ライター ヨダエリ)

[日本経済新聞夕刊2017年12月18日付]

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