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AIが生む新たな音楽 ヒトの動きを感知、自動で作曲

2017/12/18付 日本経済新聞 夕刊

AIピアノと共演する森山開次とベルリン・フィルのメンバー(11月22日、東京芸大奏楽堂)=進藤 綾音撮影

人工知能(AI)を活用し新たな音楽を生み出す試みが活発になってきた。ヒトとの共存、ヒトの常識を超えた音楽の創造という異なる理念を掲げる2つの計画が、着実に歩を進めている。

11月下旬、東京芸術大学(東京・台東)の音楽ホール「奏楽堂」の舞台に、ダンサーの森山開次とベルリン・フィルのメンバーによる室内楽団「シャルーン・アンサンブル」が現れた。奥にピアノがあるが、その前には誰もいない。森山は、手や足などに黒い器具を装着している。

この日の公演は、弦楽アンサンブルと、最新のAIを搭載したシステムをつないだ自動演奏ピアノの“共演”だった。森山には筋電位、加速度など4種類の動きを感知するセンサーが両腕と両足、背中に取り付けられている。森山の50種類ほどの動きのパターンは音にインプットされ、身体の動きに合わせてAIピアノが音楽を奏でる。

■まるで即興演奏

演奏したのは東京芸大副学長、松下功が作曲した「舞・飛天遊」。和太鼓とオーケストラのための曲を、この公演に向け編曲した。

森山の「ソロ」パートでは、細やかで躍動感のある身体の動きに合わせ、AIピアノがまるで即興演奏のように音を出し、それに呼応した「シャルーン・アンサンブル」が美しい響きを重ねた。松下は「AIと森山さんのずれもほとんどなく、予想以上に素晴らしい成果だった」と手応えを語る。

東京芸大とヤマハは2015年からAIと音楽のコラボレーションを進めている。第1弾として昨年、旧ソ連出身の名ピアニスト、リヒテルの演奏データをプログラミングしたピアノとシャルーン・アンサンブルを共演させた。第2弾となる今回は、人間の動きを高性能センサーで感知し、音楽を奏でるという、さらに一歩進んだ試みだ。

このシステムを開発したヤマハの第1研究開発部長、田邑元一は「森山さんの繊細な動きを素早く拾うのに苦労した」と話す。

さまざまな舞台を経験している森山も、AIとの共演は初めて。「はじめは自分の動きが思うように音にならず戸惑ったが、徐々に、AIが出す音に自分も刺激を受けるようになった。ダンサー、ピアニスト、指揮者を同時に演じるような感覚」という。

人工知能美学芸術展では、人の動きに合わせアルゴリズムによって作曲された曲が披露された(11月3日、沖縄県恩納村の沖縄科学技術大学院大学)

こうした試みの意義について、松下は「様々な事情で自分で演奏できない人が、AIを使えば音楽に参加できる。音楽家もAIに刺激を受け、さらに感覚を磨くこともできる」と説明する。あくまで人間が主体となったAIの活用法を模索しているという。

一方、AIによる新たな芸術の創造を志向する動きもある。美術家の中ザワヒデキが立ち上げた「AI美学芸術研究会」だ。来年1月8日まで、沖縄県で総合企画展「人工知能美学芸術展」を開催中で、11月には実験的なコンサート「機械美学音楽」を開いた。

■夢は「機械に感性」

そこで披露された三輪真弘の「みんなが好きな給食のおまんじゅう」という音楽は、舞台上の複数の人間の動きを感知しながら、コンピューターがアルゴリズム(自動算法)によって曲を作っていくものだ。

中ザワらは芸術におけるAIと人間の関係について、(1)人間が人間的感性で創造する芸術(2)機械が人間的感性らしきもので創造する芸術(3)人間が機械を用いて創造する芸術(4)機械が機械的感性で創造する芸術、の4種類に分けて考えている。今回の総合企画展は(2)を重視したものになっているという。

「AIによる芸術の理想は(4)の、機械自身による芸術の創造だが、現状では人間によるプログラムを機械が再現しているだけのものも多い。だが、アルファ碁のように人間の常識を超える『ブラックボックスの思考』が音楽にも生まれる可能性はある。いつか、人間が突き放されてしまうような新しい芸術が生まれると面白い」と中ザワは考えている。

(文化部 岩崎貴行)

[日本経済新聞夕刊2017年12月18日付]

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