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スマートフォン(スマホ)に親しんだ若者は就職後、パソコンのキーボードをうまく打てず苦労している。実は記者(23)もその一人。キーボードを見ずに文字を入力する「タッチタイピング」を習得すべく猛練習した。

「社会に出てタイピングが必要と感じる若者が多い」。タイピングの練習サービスを手掛けるイータイピング(愛知県東海市)の嶌貫実代表は話す。約130万人いる会員の8割強が20代以下だ。

タイピング練習は内定者研修にも取り入れられている。プロシーズ(大阪府吹田市)は企業向けにインターネット上の内定者研修を提供。タイピング練習を82社が利用する。「人事担当者は新入社員がタイピングできないのを不安視している」(同社)

キーボードを見ずに打つ入力方法は、昔はブラインドタッチと呼ばれていた。だが「ブラインド(盲目)」の表現を避けるため、今はタッチタイピングと呼ぶことが多い。

タッチタイピングのメリットは2つ。一つはスピードが速くなり、書類やメールの作成時間が短縮できる。そして視線が常に画面に向くため、変換ミスを見つけやすい。

原稿の締め切りまで1週間。無料の練習サイトを使い、ウィンドウズのパソコンで練習を始めた。

ひとまず腕試し。1分間に打ったキーの数を測ると190だった。嶌貫さんによると「ビジネスに支障がないレベルは200以上」。まずい。

早速、基本から始めた。まずはホームポジションを身につける。左手の人さし指を「F」、右手の人さし指を「J」のキーに置く。

次に使用頻度の高い「A・I・U・E・O」の母音を正確に打つため、左手小指の「A」から右手薬指の「O」まで練習した。その後、単語を打ち続けたところ、指が勝手に動くようになった。

1週間練習した結果、1分間に235キーを打てるようになった。やり始めたからにはもっと上を目指したい。

達人から学ぼうと、全日本タイピスト連合の隅野貴裕代表(35)を訪ねた。隅野さんは1秒間に24キーを打てる。どうしてそんなに速いのか。

隅野さんによると、ホームポジションのF、Jと母音、nが速く打てると全体の速度が上がりやすいという。そこで練習用短文「魔法の例文」を作ってくれた。例えば「さぁ富士山の絵はがき」。F、J、母音、nが過不足なく含まれ、練習に最適だ。

さらなるコツは「使う指を分散させること」(隅野さん)。例えば「yu」は基本の打ち方ではどちらも右手人さし指で打つ。これを右手の人さし指と中指で打てば速い。

タイピングでは変換も手間だ。一発で変換されるように打つとよいそうだ。「上手」と入力したいときは「jouzu(じょうず)」と打たずに「uwate(うわて)」と打つ。変換で「上図」など違う単語は出てこなくなり、打つキー数も減る。

小さい「ぁぃぅぇぉ」にも裏ワザがある。「ぁ」は「xa」でも「la」でも打てる。一般に左手の薬指と小指を使うより、右手の薬指と左手の小指を使って「la」と打つ方が指運びが速い。

奥深いキーボード入力。ただ最近は手ごわいライバルが登場している。音声入力だ。

11月、医療や金融分野に提供していた音声認識ソフトを一般ビジネス向けにも追加して発売したアドバンスト・メディア(東京・豊島)。執行役員の坂口毅雄さんは「働き方改革で業務効率化を図る企業から需要がある」と話す。業務報告書などを音声入力で作成できるという。

ではせっかく覚えたタッチタイピングは無駄になるのか。「短いメッセージの入力は音声入力、編集作業を伴う長文はキーボードの方が適しているのが現状」(坂口さん)。もうしばらくは習得したワザが役に立ちそうだ。

◇  ◇  ◇

タイピング、山頂・砂漠・海底でも

海底でのエクストリームタイピング(メキシコ)

海底でのエクストリームタイピング(メキシコ)

全日本タイピスト連合の隅野貴裕代表は、タイピングの面白さを伝える活動に取り組んでいる。砂漠や海中など極限の状況下でキーボードをたたく「エクストリームタイピング」もその一つだ。

これまでキリマンジャロの山頂、ドバイの砂漠、メキシコの海底でタイピングをした。海中にはパソコンを防水の状態にして持ち込んだ。海底まで潜り、空気タンクの限界と同じ30分程で、日本国憲法の全文を打ったという。

隅野さんは「タイピングは一度身につければ一生もののスキル。少しでも興味をもったら練習してみてほしい」と話す。よし。記者魂に火が付いた。どんな現場でも原稿が書けるようタイピングを極めよう。

(相馬真依)

[NIKKEIプラス1 2017年12月16日付]

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