大切なコート、ブラシ掛けで長持ち
寒さが身にしみる季節になり、コートが手放せなくなってきた。コートはこまめに手入れするほど長持ちするという。日々のメンテナンスの仕方や、シーズン後の上手な収納法を探った。
コートを長持ちさせるには、着ているときから注意が必要だ。アパレルメーカー、三陽商会品質管理グループの近藤梨恵さんは「ちょっと体の動きを意識するだけで、コートへの負荷がずいぶん軽くなる」と話す。
例えば電車内で座るときは、無駄な摩擦を防ぐため、体を揺すったり押しつけたりしない。暖房がきいて汗をかきそうなら面倒がらずに短時間でも脱ぐ。かばんを肩に掛ける場合は日によって左右交互にしてみる。摩擦を防ぐためには、サイズも重要だ。小さめで生地が突っ張った状態だと、摩耗しやすく毛玉にもなりやすい。
帰宅後すぐにハンガー掛けて
「帰宅したらすぐにハンガーに掛けて」と近藤さん。雨や雪が付いていたら、柔らかいタオルなどでふき取る。汗をかけば内部にこもるので、しばらく風通しのよい場所につるして湿気を飛ばす。これだけで臭いやカビをかなり防げるという。ハンガーは肩幅に合った厚みのあるものを選ぶと形崩れしにくい。金属製より吸湿性の高い木製がお薦めだ。細めのハンガーしかない場合は「タオルを巻いて厚みを出せば、ずれないし肩先が出っ張るのを防げる」。
次にブラシ掛け。近藤さんによると、ハンガーにつるしたまま「毛並みに沿って上から下へ」が基本。着用後、毎回掛けるのが望ましい。カシミヤなど毛足の長い素材はその前に逆毛にブラシを当ててホコリを軽く払う。こすると汚れが生地に絡んで取れにくくなるので、手首のスナップを効かせてホコリを払い飛ばすように使う。
かばんや肩掛けが当たる部分などは丁寧に。ポケットの縁や内部、襟裏、首回り、袖口など肌や手に触れる部分は皮脂が付きやすいので入念に掛ける。皮脂汚れがブラシで落ちるわけではないが、放っておくとホコリが付きやすくなる。2週間に1回程度、汚れが中に入り込まないよう、こすらず、手首のスナップを使って表面にかき出すように掛ける。
ブラシはどれがいいか。東急ハンズ銀座店の山口順さんが推奨するのは3千円から5千円台で買える馬や豚などの獣毛製。馬毛はカシミヤやシルクなど柔らかめの素材、豚毛は硬めの素材に向く。「1本選ぶなら当たりの柔らかい馬毛。合繊製は静電気でホコリを呼ぶので避けたい」
汚れに気づいたら、おしゃれ着用の洗剤を水で薄めてタオルに付け、こすらずトントンと軽くたたく。汚れが落ちたら水にぬらしたタオルで洗剤をよくふき取り、陰干しする。汗や皮脂汚れはすぐに処理すればきれいに落ちる。「臭いやシワはスチームアイロンの蒸気を当てればほぼ取れる」と近藤さん。
シーズン終了後はクリーニング店へ。一度着ただけでも首回りなどに皮脂が付着し、時間がたつと黄ばんで落ちにくくなる。食べこぼしなどは虫食いの原因になる。カシミヤ、シルク、ウールなど肌触りのよい高級素材ほど虫食いになりやすいので要注意だ。はっ水加工を施したコートも長く着ると効果が薄れるので、クリーニング店で再加工してもらおう。
高級素材ほどこまめなケアを
クリーニング店から戻ってきたら、ビニールカバーを必ず外す。そのままだと溶剤の臭いが付いたり、湿気でカビになったりする。クローゼット内はギュウギュウにせず、ゆとりをもたせハンガーに掛けてしまう。時々開け放して空気を入れ替えるとカビ防止になる。太陽光だけでなく、蛍光灯の光でも生地が変色することがあるので、保管時は光に当てないようにする。
ボリュームがなくなったダウンコートは衣類乾燥機で15~30分回すと回復することがある。日焼けに注意して屋外に短時間干せば、布団と同じふっくら効果が得られる。
高いコートだからといって長くもつとは限らない。「むしろ高級な天然素材ほどデリケートですぐに駄目になると考え、こまめにケアしてほしい」(三陽商会コート企画グループの石田和孝さん)。お気に入りのコートほど毎日着たくなるが、2、3着用意して順番に休ませるのも長持ちさせる秘訣という。
(竹沢正英)
[NIKKEIプラス1 2017年12月16日付]
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