おなかだけポッコリ、なぜ? ドローインでへこませる
朝晩に全身伸ばし インナーマッスルと骨盤ゆがみに効く
年齢とともに多くの人が気にする、ぽっこりおなか。主な原因はインナーマッスル(深層筋)の衰えと骨盤のゆがみだ。日常生活に取り入れやすい、おなか痩せの方法を探った。
「他の部位はスリムなのに、おなかだけ出ている」「つらい食事制限や運動をしても、おなかが痩せない」――そんな悩みを持つ人は多い。なぜおなか回りには脂肪がつきやすいのか。
「脂肪は筋肉を使っていない部分に蓄積しやすいから」と話すのは、健康運動指導士の植森美緒氏。牛肉や豚肉を例に挙げて「体の重みを支えるために筋肉を使う部位のヒレ肉に比べ、おなかのバラ肉は3倍近く脂肪が多い」と説明する。ぽっこりおなかの解消には、おなかの筋肉を使うことが不可欠だ。
「鍛えるべきは、腹横筋というインナーマッスル」と植森氏。体幹を支えて内臓の位置を保つ筋肉の衰えが、ぽっこりおなかの主な原因だという。一般的な腹筋運動は、アウターマッスルの腹直筋を鍛えるもの。腹横筋にアプローチするには「おなかを大きくへこませるドローインの動作が一番有効」(植森氏)。
ドローインはもともと腰痛のリハビリなどに用いる理学療法だ。近年は体幹トレーニングとして注目を集めている。方法はとても簡単だ。背筋を真っすぐ伸ばし、肩を後ろに引いて、おなかを最大限へこませる。効果を上げるには、自然な呼吸のまま正しい姿勢で取り組むことが重要だ。
はじめに後頭部と肩甲骨、二の腕、おしり、かかとの5カ所を壁にしっかりつけて立ち、正しい姿勢の作り方を覚えよう。「おなかをへこませる際、肩を上げたり背中を丸めたりしないこと。息を止めるのもNG」と植森氏。
仕事中や電車の中、テレビを見ながら、いつでもどこでも実践できる。回数や時間に決まりはないが、毎日続けて、なるべく長く大きく何度もへこませるのがサイズダウンへの近道だ。
「筋肉は形状記憶する。使ったなりに鍛えられ、形状記憶が定着していく」と植森氏は指摘する。続けることで筋肉が活性化し、消費エネルギーが増えて、脂肪を燃焼させやすくなる。「特に歩きながらのドローインで消費カロリーを増やすことが可能」
年齢を重ねると、骨盤は前や後ろに傾き、開き気味になる。こうした骨盤のゆがみにより「しっかり支えられなくなった内臓が下がって前に押し出されて、下腹がぽっこり出てしまう」と美容整体サロン・アクアヴェーラ(愛知・豊橋)の波多野賢也代表は話す。内臓を正しい位置に戻すには、骨盤を立てて締める必要がある。波多野氏は一人で簡単に取り組めるポーズを考案、紹介している。
両足のかかとをつけ、つま先を直角に開いて真っすぐに立つ。腕を真上に伸ばして両手を頭の上で重ね、鼻から3秒で息を吸う。つま先立ちをして全身を上に伸ばしつつ、息を一気に吐き出す。この状態で腹式呼吸しながら、全身を縦に真っすぐ伸ばし、7秒間キープしよう。体を固定して圧をかけるのがカギだ。
両手両足をつけることで「骨盤と肩甲骨という、体を支える上下のポイントをしっかり固定できる」と波多野氏。「この1ポーズで全身を伸ばすストレッチ、体の軸を作る体幹トレーニング、骨盤のゆがみを整える姿勢矯正ができる」
骨盤は継続して整えないと、すぐにゆがんでしまう。1回15秒のポーズを朝晩2回ずつとることで、下腹がすっきりしてくるという。骨盤が動きやすく、内臓下垂が起きやすい女性に特におすすめだ。
(ライター 松田亜希子)
[NIKKEIプラス1 2017年12月9日付]
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