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上司から注意を受けた時の対応は、人によっていろいろパターンがある。真摯に受け止める、すぐ責任転嫁する、自分を責め過ぎてしまう、受け流すなどなど。指摘の内容を成長につなげつつ、自分の心を守るにはどうすればいいのか。叱られ上手になる方法を探った。

「わかりました、もう大丈夫です」「次は頑張ります」。上司から注意を受けた時に使いがちな受け答えだが、その場をやり過ごすためだけの言葉になっていないだろうか。「実際、よく考えないまま指摘を拒絶してしまう例も少なくない」と言うのは東京大学大学総合教育研究センター准教授、中原淳さんだ。

業務に追われるなかで、上司も部下も、互いに言葉足らずになることもある。上司自身が主観的で曖昧な表現を避けることが大前提となるが、その上で注意の内容がよく分からなかった場合、部下はどうすればいいのか。

「わかりにくければ、『この件で少し相談させてください』と頼む。その場で時間がなければ、アポを取るといい」と中原さんは助言する。さらに相談のコツとして、「SBI」を聞き出すことを挙げる。SBIとは、「Situation(どんな状況で)」「Behavior(どんな行動が)」「Impact(どんな影響を与えたか)」の略だ。この3点から注意された要因や背景を分析し、指摘の意味をはっきりさせる。

トラブル報告は事実だけ伝える

一方、トラブルが発生し上司に報告する場合、まずは事実だけを伝える。叱られまいと言い訳を先にしがちだが、これは厳禁。人材育成、組織開発支援を行うFeelWorks(東京・中央)代表取締役の前川孝雄さんは「上司は一刻も早く事態を収拾する必要がある。起こったことをまず説明する」と強調する。

そこで上司から、「何でこんなことになったんだ」と詰問されても、客観的に伝えるように努める。冷静に振り返り話すことで原因を突き止められる可能性が高まる。

何かと口うるさかったり、厳しく叱ったりする上司を「苦手」と感じる若手も少なくないかもしれない。前川さんは、「敬遠したい上司ほど、日ごろからこまめな『ほうれんそう』(報告・連絡・相談)を心がけるといい」と助言する。その積み重ねがあれば、信頼関係をつくりやすい。気軽に注意の真意を聞けるようにしておけば「より高い目線から見た業務の目的、自分や組織全体の役割が分かり、仕事が『立体的』に見えてくるはずだ」(前川さん)。

注意されてもすべてうのみにせず、優先順位を付けて取捨選択する能力も大切だ

注意されてもすべてうのみにせず、優先順位を付けて取捨選択する能力も大切だ

ただ、指摘を受け止める努力が大切とはいえ、状況にもよるが言われたことをすべてうのみにする必要はない。「本当にそうかな、といったん疑ったり、取捨選択したりして必要なことだけ取り入れる知恵も身につけよう」(中原さん)。自分で優先順位を付けることで、注意の内容も生きてくる。中原さんが勧めるのは「知の三角測量」。疑問があれば信頼できる相手を2人見つけて事情を話し、考えを聞いてみると、より客観的に話を捉えることができる。

理不尽な叱責は第三者に相談

「業務上の命令や指導の範囲を超えた叱責」など、パワーハラスメントを疑わなければならないケースもある。

休職者の職場復帰支援などを手掛けるジャパンEAPシステムズ(東京・新宿)の松本桂樹社長は、理不尽な叱責から自分の心を守る術を覚えてほしい、と強調する。例えば、話が終わったらその場を離れ、休憩室で温かいコーヒーを飲んだりして一息つく。「一度肩に力を入れ、縮めながら息を吸い、じわじわ吐き出して力を抜いていくと緊張がほぐれる」(松本さん)。叱られると自分を責めがちだが、五感に意識を向けることで気持ちを切り替えられる。

その上で、第三者に状況を打ち明けたり、メールのやり取りでは関係者に同送したりして、周囲に理解者をつくる。疑問に感じる叱責に対し、客観的な判断をできるようにしておくことが欠かせない。

松本さんは「上司との関係にこだわりすぎない。相手は自分という人間ではなく、自分の『役割』について指摘しているのだということを覚えていてほしい」とアドバイスする。

(ライター 西川敦子)

[日本経済新聞夕刊2017年12月4日付]

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