『ギフテッド』 天才少女巡る大人の葛藤
数学の才能(ギフテッド)に恵まれた少女を英才教育で育てたい祖母。少女の亡き母親から普通の子に育てて欲しいと頼まれた彼女の弟。両者の言い分を検証しつつ天才少女の幸せを考えるドラマは、少女と育ての親の叔父の心の深い結びつきによって特殊なケースではない普遍性を持った。
チャーミングなラブ・ストーリー『(500)日のサマー』(2009年)で長編監督デビューを飾ったマーク・ウェブが監督。以来彼は、アメコミ物の『アメイジング・スパイダーマン』などでも人の思いを細やかに積み重ねることで軽快な優しさを作ってきた。
登校初日、算数の才能が際立ち過ぎのメアリー(マッケナ・グレイス)に困惑した教師ボニー(ジェニー・スレイト)は、メアリーの保護者の叔父フランク(クリス・エヴァンス)の名をネットで検索してみた。その結果、彼の姉が自殺した著名な数学者と判明する。
マイアミでボートの修理をして生計を立てる彼は、生意気盛りのメアリーと彼女が大好きな片目の猫と暮らしている。隣人のロバータ(オクタヴィア・スペンサー)は、彼らがこの町で暮らす経緯を知る良き友だ。
しかしメアリーの祖母は数学の天才だった娘の血を引く孫が普通の学校教育を受けることを認めず、裁判を起こした。健康保険にも入れない貧しい暮らしのフランクに勝ち目はない。
天賦の才能を持つ者が普通の学校教育を受けて何が悪い、と純粋培養の世間知らずが原因で死んだ姉を悲しむ弟はメアリーを普通に育てたい。でも才能の方が勝手に芽吹いて7歳児とは思えない聡明(そうめい)さを見せる。
メアリーは祖母にもらった数学ソフト入りのマックブックに夢中になるが、フランク譲りの豊かな愛や友情も持っている。天才少女をめぐる大人の葛藤のドラマは、とりあえず幸せに幕を下ろしそうでひと安心。1時間42分。
★★★
(映画評論家 渡辺 祥子)
[日本経済新聞夕刊2017年11月24日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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