こうした実態を踏まえ、日本小児眼科学会は2016年8月、3歳児健診について提言をまとめた。3歳6カ月ごろの検査が効率的であることや保護者への啓発の必要性を指摘したほか、会場でスクリーナーなどの検査機器を導入するよう勧めている。
厚労省は今春、全国の自治体に3歳児健診で視力検査を適切に実施するよう通知を出した。子どもの目は6歳までにほぼ完成するとしたうえで「3歳児健診で異常が見逃されると十分な視力が得られないことがあると周知すること」と注意喚起した。仁科医師は「通知により検査の精度が高まってほしい」と期待する。
一方、家庭で気をつけられることもあるという。目を細めたり、首を曲げて見たりするのが目立つ子どもや、片目を隠すと嫌がるなどの反応が見られる場合、弱視の可能性がある。子どものこうした行動などは生後3カ月ごろからチェックできる。該当する項目が一つでもあれば、眼科に相談するなど対処が必要だ。
特に注意したいのは片目だけ弱視の場合だ。片方の目が見えていると、もう一方の異常に気づきにくい。弱視は6歳までに治すことが望ましいが、就学時健診や小学校入学後にわかったとしても、治療できることもある。仁科医師は「あきらめずにできるだけ早く治療を」と呼びかける。
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小学生は近視に注意 外遊びに抑制効果
小学生になってから気をつけたいのは近視だ。文部科学省の調査によると、裸眼視力が0.3未満の小学生の割合は16年に9%だった。調査を始めた1979年に比べ3倍に増えた。近視は遺伝因子と環境因子が複雑にからんで起こると考えられている。科学的な裏付けはないが、ゲームやスマートフォンの普及が影響している可能性がある。
もともとアジア系人種は遺伝的に近視になりやすいという。「日本では一生メガネをかけないですむ人は少ない」と東京医科歯科大の大野教授は指摘する。
近視を抑制する手段としては屋外活動が有効だ。1時間屋外活動が増えると近視を13%抑制できるという研究がある。国立成育医療研究センターの仁科医師は「近くでモノを見る作業も目に負担をかける。30分以上スマートフォンなどの画面を見続けないことや、本を読むときは30センチ以上目を離すことなども心がけるとよい」と話す。
(天野由輝子)
[日本経済新聞夕刊2017年11月9日付]