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クラレが全額出資する商事会社クラレトレーディングのベトナム子会社で営業を統括する岩城徳直さん(48)は本格進出から4年ほどで化学品などの取引先を約30社まで急増させた。文化の違うベトナム人との交渉を現地の部下とのチームプレーで成立に導く。合言葉を使った意思疎通が生み出す良好な関係が原動力だ。

2015年初め、ホーチミン近郊の工業団地にある染色工場を部下と訪れた。交渉相手の工場幹部は取引成立の命運を握るキーマンだ。「クラレの染色技術は先進国で評価が高い。これで作れば必ず売れる」。熱心に提案を続けるが、硬い表情は崩れない。

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「私が意訳して、代わりに伝えます」。岩城さんが部下に目で合図を送ると、ベトナム人の部下が間に入って話し始めた。ベトナム語でやりとりすること数分、先方の表情が嘘のようにほぐれていった。交渉はとんとん拍子で進み、取引成立に至った。

「部下が話し始めたタイミングは事前に擦り合わせた通り」。岩城さんは部下との連携が思惑通りはまった最初の事例をこう振り返る。

ベトナム人との交渉で大まかな議論はできても、細かいニュアンスの調整までは難しい。技術は評価されても、日本的な接し方が敬遠されることもある。岩城さんは終盤の詳細をあらかじめ部下と詰めている。ベトナム人同士で話すと相手が信頼を寄せて商談が成立することが多い。

苦い経験がある。赴任当初の13年、ある染色工場への製造委託交渉を成立させたが、製品が初めて手元に届いた日に事態が急変する。提示していた赤色とは明らかに異なる色に仕上がっていた。不良品だと指摘すると「赤は赤。消費者が買うときにサンプルの色と見比べることなどない」と反論された。「日本人は細かすぎる。嫌なら取引をやめてもいい」とまで言われた。

関係を修復するため会食の場を設けた。酔いが回り、先方から「クラレの技術力は理解している。ただ日本人の考えをそのままぶつけられても納得できない」と打ち明けられた。この出来事からは「考えをあえて100%は伝えない」ことにした。日本人には判別できないような「日本語のトゲ」をベトナム人の部下に抜いてもらう工夫をした。

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