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ニッキィの大疑問

強い台風、増えた? 日本近海で水温上がり発達

2017/11/6付 日本経済新聞 夕刊

台風で堤防が決壊したり、住宅街が浸水したりするケースが相次いでいる

 最近、勢力の強い台風がしょっちゅう日本に近づいている気がする。とても激しい雨が降って洪水や土砂崩れが起きるのも珍しくないし、不安よね。これからも強い台風が増えるのかな。

 強い台風について、藤井智子さん(58)と海老沢亜希子さん(31)が安藤淳編集委員に話を聞いた。

――最近、台風による被害が目立つ気がします。

 確かに「非常に強い」とか「猛烈な」といった形容詞がついた台風が接近中というニュースをよく耳にします。台風の強さは風速で、大きさは強風域の広さで決まります。2017年の台風21号は10月23日に「超大型」のまま、静岡県に上陸しました。こんなことは記録上、初めてです。

 台風が近づくと大雨が降ることが多いのは、南から暖かく湿った空気を日本に運び込み雲が発達するからです。前線がかかっているとさらに危険です。17年7月の「九州北部豪雨」は長崎市に上陸した台風3号と梅雨前線が影響しました。15年9月に鬼怒川が決壊した「関東・東北豪雨」の時も、2つの台風の影響で湿った暖かい空気が大量に流れ込んだのです。

 17年は大西洋でも強力なハリケーンが目立ちます。9月には「マリア」がプエルトリコに大きな被害をもたらし、8月の「ハービー」は米テキサス州を直撃しました。

――なぜ強い台風が増えているのですか。

 台風は赤道近くの熱帯の暖かい海で生まれ、水蒸気が雲になる際に放出される熱を主なエネルギー源として成長します。海面水温が26~27度以上だと台風の発生や成長に最適とされます。通常は北上するにつれ海面水温は下がるので、台風も弱まります。ところが最近は日本に近づく台風があまり衰えないばかりか、勢力を増すケースも目立ちます。日本近海の海面水温が高く、台風が成長を続けられるからです。

 熱帯の海面水温が上下する現象として有名なのがエルニーニョやラニーニャです。14年夏から16年春に強力な「スーパーエルニーニョ」が発生しましたが、終息後にその間接的な影響で日本の南海上の海面水温が上がり、台風の発生や発達を促した可能性があります。さらにモンスーンという季節風や、熱帯海域を東または北寄りに進む積乱雲の塊の影響が重なると台風の渦ができやすくなります。温暖化の影響で熱帯の海面水温が全体として上がっているところへこれらの現象が重なり、台風発達の条件がそろいやすくなっているようです。

――今後も台風被害は増えるのでしょうか。

 その可能性は高いと言えます。最大風速(1分平均)が秒速65メートル以上に達する「スーパー台風」が日本に接近し、猛烈な強さのまま関東地方などに接近するケースも出てきそうです。台風が最盛期を迎える緯度が、徐々に北上しているという研究もあります。

 日本付近で近年、台風の発生数そのものは増えていません。海洋研究開発機構のスーパーコンピューター「地球シミュレータ」などで温暖化が進んだ場合の台風やハリケーンをシミュレーションすると強力なものの出現頻度が高まる一方、発生総数は減少傾向という結果が出ています。地球全体で台風などに使えるエネルギー総量はそれほど変わらないためと考えられます。

――将来に向けて、どのような備えが必要ですか。

 被災地のお年寄りが「こんなにひどい雨は生まれて初めてだ」と話すのをよく聞きます。経験のないような雨、風にいつ見舞われてもおかしくないという前提で備える必要があります。スマートフォンなどを使い、常に最新の情報を入手するよう心がけるのは有効な手段です。たとえば気象庁ホームページの「高解像度降水ナウキャスト」の画像は、市区町村単位で豪雨の接近や移動がわかります。

 大雨や洪水の警報、土砂災害の情報などが出たらできるだけ早く避難することです。「特別警報」が出てから逃げればよいと誤解している人もいますが、遅すぎます。それまでに避難を終えていなければなりません。過去の「常識」にとらわれず、一人ひとりが危機感をもつことが大切です。

■ちょっとウンチク

温帯低気圧から再発達も

 「台風は温帯低気圧に変わりました」という解説を聞いてホッとする人は多いのではないだろうか。台風は熱帯の海で生まれた熱帯低気圧が強まったもの。一方、温帯低気圧は北からの寒気と南からの暖気がせめぎ合うエネルギーが原動力で、温暖前線や寒冷前線を伴うのが特徴だ。

 温帯低気圧になってから再発達し、中心から千数百キロメートル離れた場所でも強風が吹き荒れる場合がある。前線の近くなどでは雲が発達し、豪雨のリスクは大きい。

 発達した温帯低気圧が台風に変わったという逆のケースは知られていないが、暖かい海面上で構造が熱帯低気圧に近づいた例はある。温暖化が進むとこうした珍しい現象も増えるかもしれない。(編集委員 安藤淳)

■今回のニッキィ
藤井 智子さん 生協の生活アドバイザー。クラフトビールに夫婦ではまっている。出張や旅行で出かけた先で地元のビールを買って帰るそうで、「味に個性があって楽しいですよ」
海老沢 亜希子さん エネルギー関連企業勤務。人気チケットのプレゼントに当選するなど、夏ごろから何かと幸運に恵まれている。「人生が楽しくなります。宝くじも買おうかな」

[日本経済新聞夕刊 2017年11月6日付]

 「ニッキィの大疑問」は月曜更新です。次回は11月20日の予定です。

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