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職場の知恵

メールに追われて疲れたら 返信判断に「自分ルール」

2017/11/6付 日本経済新聞 夕刊

 もしパソコンやスマートフォン(スマホ)がなくなったら? 「困る」「仕事にならない」と思う人は多いだろう。一方で、デジタル機器に囲まれた日々を送る中で、これまでになかった疲れを感じている人も多い。心身の健康を保つためのポイントをまとめた。

複数のデジタル機器を持ち歩く人は少なくない

 「メールの文面に悩んでいたら、夢にまで出てきた」。都内で営業職に就くAさん(26)は話す。帰宅後も家で仕事のメールに返信しているが、最近はそのスタイルに疲れてきた。

 「メールがどんどん届くのが嫌と感じている人は多い」。そう話すのは一般社団法人日本ビジネスメール協会(東京・千代田)の代表理事、平野友朗さんだ。

 携帯電話がなかった時代は、営業マンなども自分のペースで仕事ができたが、「今はスマホを持っているのが当たり前なので、常にメールを気にしていないといけない」(平野さん)。

■込み入った話は電話で

 メールは情報が文字のみで、ルールが多様化しており誤解が生じやすい。電話や対面なら誤解が生じたと感じたらその場で訂正できるが、メールでは不可能。そこで相手を不快にさせないよう気を使って文面を書き、さらに疲労する。

 メールで疲れないためには「自分のルールを決めるといい」と平野さんは話す。たとえば、1通の返信にかける時間を「基本1分、長くて10分」などと決める。分量のある話や込み入った話は電話にする、などだ。

 ところが最近はそれを避けようとする人も多い。「電話することや話すことが面倒だと感じるのも、デジタルライフ疲労の症状」。杏林大学名誉教授でNPO法人日本ブレインヘルス協会(東京・目黒)の理事長、古賀良彦さんは話す。

 「本来コミュニケーションは情緒的なもの。しかし隣の席の上司にもメールで連絡するなど全てを文字だけで済ませていると、相手の顔色や息遣いなどを気にする機会がなくなる。結果、情緒を推し量りながら“話す”こと自体がおっくうになっていく」(古賀氏)

 情緒的なところを推量しない世界では、全くけんかにならないか大げんかになるかのどちらかという。ツイッターで頻繁に大げんかが起きるのは、対面なら避けることを言ってしまうからだと古賀氏は指摘する。

 交流サイト(SNS)の利用で疲れをためている人も多い。ウェブメディア評論家の落合正和さんは「SNSは承認欲求を満たすためのツールでもある。生活が充実しているように見える投稿をしなければという強迫観念も疲労の要因」と話す。

 コメント返しへの義務感も疲れの一因。落合さんによるとフェイスブックに「いいね!」をする予定を手帳に書いている人も。

■スマホなしで過ごす日をつくる

 「SNSでもメールでも、疲労を防ぐには連絡が取れない時間があると周りに認識させること」と落合さん。そのためには家に帰ったら返信しないなどルールを決めて実践することが大切だ。さらに、デジタル機器から一定期間離れる「デジタル・デトックス」を定期的に行うことを勧める。

 落合さん自身は千葉県香取市にある農園に囲まれたコテージに泊まれる施設で、年に一度は過ごす。事前にSNSで告知し、パソコンもスマホも全地球測位システム(GPS)腕時計もデジタル機器は全て車に置いて行く。

 そうしてデジタルのない2日間を過ごした後は、「爽快感と解放感に満たされ、頭がさえきった状態で仕事もはかどる」(落合さん)。

 日常の中でも、「スマホを家に置いて散歩」など短い時間で試すことを落合さんは勧める。いきなり泊まりがけだと挫折する可能性もある。「自分も最初の2回は、仕事で何か問題が起きていないかと不安になり、スマホを取りに戻った」。だが、実際には何も起きていなかったという。

 デジタルライフ疲労を感じやすい人には「まじめ、きちょうめん、人付き合いに気を使いすぎる」などの傾向があると、精神科医でもある古賀氏は話す。「逆に、ストレス耐性がある人は身体が元気で柔軟性があり外交的。性格は変えられなくても行動として心がけることはできる」(古賀氏)。今日からデジタルとの付き合い方を少しずつ変えてみてはいかがだろう。

(ライター ヨダエリ)

[日本経済新聞夕刊2017年11月6日付]

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