正しい腹筋運動 いつでもどこでも
立っても座っても効果実感 動きながら呼吸を意識
美しい腹筋を目指して運動する人が増えている。せっかく回数を重ねても、間違った動作だと効き目は乏しい。正しい方法と自分にあった運動を日常生活に取り入れて、適切かつ効果的に鍛えよう。
腹筋運動といえば、寝転んで上体を起こす動作を思い浮かべる人が多いだろう。この動きは一般的だが、腕の振りや太ももの力を使うなどして反動をつけていては効果は半減する。腰を反らせて起き上がると、腰痛を引き起こす。
腹筋とは主に腹直筋、外腹斜筋、腹横筋で構成される。体の曲げ伸ばし運動のほか、胴体を支えて脊柱や腰椎、内臓を適正な位置に保つ役割を担う。腹筋群はまさしく天然のコルセットと呼べる。
腹筋群が弱ると、臓器の位置を保てなくなって、内臓機能が低下する。腹筋の衰えで脊柱や腰椎がS字カーブを維持できなくなると、腰痛や姿勢の悪化を招く。予防するには、腹筋に適度な刺激を与えることが不可欠だ。
腹筋運動に苦手意識を持つ人もいるが、立った状態や座った姿勢でも腹筋を十分に刺激できる方法を紹介したい。電車の中や仕事の合間など、手軽に取り組むことができる。運動時は常に腹筋と呼吸を意識するよう心がけよう。
まずは立った姿勢で「腹筋しぼり」(写真上参照)から。肋骨の横に手を添えて、大きく息を吸い込んで肋骨を開く。次に8秒ほどかけて細く長く息を吐きながら、肋骨を閉じてへそのほうへ下げていく。同時に下腹部をへそのほうへ引き上げて、胴体を細く縮めるようにする。息を吐き切るのがポイントだ。
次は椅子に座りながら、手足を使って腹筋を刺激しよう(写真上左)。椅子に浅めに座って片膝に両手を乗せる。手を乗せた方の脚を持ち上げながら、両手で脚を押し下げて、同時に力をかける。大きく息を吸い、8秒ほどかけて息を吐きながら、手と足で上下に抵抗を掛け合う。左右交互に10回ほど繰り返そう。
続いて「座って起き上がり」(同右)。浅く腰掛けて、背もたれにゆったりと寄りかかる。背骨の上の方から丸めるように、巻き簀(す)をイメージして頭からゆっくりと上体を起こす。起き上がったら、今度は巻き簀をほどくように上体を元の位置に戻す。一連の動作を10~20回繰り返す。余裕があれば、上体を背もたれ手前ギリギリの位置で止めてみるとより効果的だ。
定番のあおむけからの腹筋運動は、反動をつけないように注意したい。床に寝転んで、椅子の座面や台など膝が直角に曲がる位置に足を乗せる(写真上の上側)。肛門を締めながらお尻を上げて、4秒ほどかけて骨盤を上げ下げする。肛門を締めつつ動くことで、骨盤底筋も刺激できる。
次に両腕を真上に伸ばして手のひらを合わせる(写真上の下側)。指先から引き上げるようなイメージで上体を起こしてみよう。まっすぐだけでなく、斜めに起き上がる動作を取り入れて外腹斜筋も刺激したい(同右)。あおむけに戻るときは背骨の一つ一つを意識ながら丁寧に動いていく。
「これならできる」と思える運動をぜひ続けてほしい。
(早稲田大学スポーツ科学学術院 荒木邦子)
[NIKKEIプラス1 2017年11月4日付]
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