『ブレードランナー2049』 仮想現実の奔放な映像

世界のポップ・カルチャーに影響を与え、カルト映画として君臨してきたのがリドリー・スコット監督のSFサスペンス『ブレードランナー』(1982年)。これを『メッセージ』(2016年)など、豊かなイメージと力強い人間描写で見る者の心を掴(つか)んだドゥニ・ヴィルヌーヴが監督、スコットが製作総指揮をとる続編が生まれた。

酸性雨が降り、夜の闇にネオンが妖しく輝いた2019年の大都市ロサンゼルスの30年後の2049年。生態系崩壊後のオレンジ色のフィルターをかけたような死の都市では労働力として量産された8型レプリカントの反乱が噂される。

LA市警のブレードランナー、K(ライアン・ゴズリング)はレプリカントを処分する任務の途中で訪ねたウォレス社で人類存亡に関わる秘密に気づき、前作の最後に姿を消したブレードランナー、リック・デッカード(元気な再登場が嬉(うれ)しいハリソン・フォード)の行方を追い始めた。

そのKを追うのはウォレス(ジャレッド・レト)の会社が遺伝子工学と記憶移植を強化して作り出したタフな女性型最新レプリカントのネクサス9。

堂々たる風格を持つ仮想現実の中の奔放なイメージに魅了される。前作にあったアジア風味の猥雑(わいざつ)な雰囲気は影をひそめ、子供の奴隷工場の非情やKとデッカードがめぐり合うラスベガスのホテルの古典的な美で彩られたディストピアの出現。映像の進歩に感嘆した。

Kは不安に駆られて自問する。自分は何者なのか、記憶は植え付けられたものか? 人間らしい感情と意識、記憶を軸に進行することで深い感動を持ちえたドラマは、デッカードと共に消息を絶った美しいレプリカントから生まれた真実を、自分のことのように感じるKの働きによって、予想だにしなかったせつない思いへとたどり着くのだ。2時間43分。

★★★★

(映画評論家 渡辺 祥子)

[日本経済新聞夕刊2017年10月27日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
エンタメ!連載記事一覧
注目記事
エンタメ!連載記事一覧