ワインの栓、折らずに抜くには カギは道具と保管
飲み仲間も忙しくなり、家飲みの機会が増えてきた。悩ましいのが、ワイン好きなのにコルク栓が上手に開けられないこと。もう少しスマートに開けられる方法はないだろうか。
まずは道具選びから。「ワインショップ・エノテカGINZA SIX店」(東京・中央)で、ソムリエの近谷沙紀さんに話を聞いた。
ワインオープナーと一口に言っても「T字型」「ウイング型」「ソムリエナイフ」「ハサミ型」などタイプは様々。よく目にするのはT字型かウイング型だが、近谷さんのおすすめは、プロも使うソムリエナイフだ。10万円台の高級品もあるが、1000円台から品ぞろえがある。
おすすめはソムリエナイフ
T字型は自分の力だけが頼りで、女性などには厳しい。力任せだとコルクを抜く際に瓶が揺れやすく、ワインのおりも広がりやすいという。ウイング型は羽のような持ち手を下ろす反動でコルクを一気に引き上げる構造。力は最小限で済むが、スクリューだけが勢いよく抜けて、穴の空いたコルクが残ってしまうこともあるという。
ソムリエナイフは瓶口にフックを引っ掛け、てこの原理で徐々に抜いていく。T字型ほど力は要らず、コルクの状態を見ながら加減ができる。キャップシールをはがすナイフもついているのも便利だ。
ハサミ型は窮余の策か。2枚の刃のような金具を両脇に差し込み引き上げる。コルクの膨張する力を利用する仕組みでコルクがもろくなっているときに使うが、差し込むつもりで押し込んでしまったり、樹脂を使った栓だと膨張する力が強過ぎて、瓶口が割れてしまうこともあるという。
最近は電動タイプもある。ボタン一つでスクリュー刺しから引き抜きまでしてくれるが、近谷さんは「古いワインにはあまり使ってほしくない」と話す。震動が大きいので、T字型と同様に瓶を揺らしてしまう。スクリューが自動で回るので、コルクがもろくなっていてもそのまま砕いてしまう可能性がある。
オープナーを選んだら、いよいよ開栓作業だ。ソムリエナイフで近谷さんに手本を見せてもらった。一番驚いたのは、最初のスクリューの刺し方。先端が真っすぐコルクの中心に刺さるようスクリューを傾けるのがコツだという。
スクリューが垂直な状態だと、コルクの中心に刺したつもりでも、回していく内に斜めに入っていってしまう。先端は軸の中心から微妙にずれているためだ。
刺したスクリューは真上に引き上げる意識が大切だ。柄の部分を親指と人さし指の間に引っ掛けると引き上げやすい。横や斜め方向の力が強すぎると、コルクが中折れするリスクが高まる。
野菜室がワインセラー
その点、ソムリエナイフの中でもフックが2カ所ある「ダブルアクション式」なら、最初に引き上げる際は柄に近い側、最後に抜く際は先端側とフックを使い分けることでコルクとの距離が近くなり、力が効率的に伝わりやすい。
上手に開栓するには保存から気を配りたい。まずは直前まで寝かせておく。乾燥してもろくなったコルクはスクリューを刺した段階で砕けることがある。横にしておけば、ワインがコルクを適度に湿らせる効果があるという。冷蔵庫で保管する場合は野菜庫を使うのが「次善の策」(近谷さん)。温度や湿度がワインの保存に適した条件に近いという。
それでもコルクがもろく、オープナーでは抜きにくくなったら、スプーンや金串で上から押し込み、瓶の中に落とすのが手っ取り早い。ワインに混ざったコルクくずは茶こしでこしながら、デキャンタなどに移し替える。コルクがすかすかの状態で、抜かずに隙間から注げる場合もあるが、味への影響を考えると避けた方が良さそうだ。
最近はペットボトルのようなスクリューキャップも増えてきた。ホテルニューオータニ(東京・千代田)のエグゼクティブシェフソムリエ、谷宣英さんによると、熟成や保管面でもコルクより優れているという。無理にコルクのワインを選ぶ必要はないのか。
谷さんは「経年変化を感じたり、栓を抜く過程の高揚感を楽しめたりするのもコルクならでは」と話す。秋の夜長、自分に合ったオープナーを準備して、焦らずコルクを抜いてみよう。
(嘉悦健太)
[NIKKEIプラス1 2017年10月28日付]
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