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池上本門寺のくず餅、発酵の滋味 熟成の黒蜜でツルリ

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NIKKEI STYLE

日蓮宗の大本山、池上本門寺(東京・大田)。「此経難持坂(しきょうなんじさか)」と呼ばれる96段の石段を上ると、大堂や本殿、五重塔が現れ、幸田露伴、プロレスラーの力道山ら多くの著名人の墓がある。日蓮の命日に合わせて行われる10月11~13日の「お会式(えしき)」には多くの参拝客が訪れ、名物のくず餅を買い求める。

くず餅といっても、葛粉や餅米は入っていない。小麦粉のでんぷんを1年以上発酵させて精製し、蒸し上げて作る。和菓子で唯一の発酵食品で、酸味の中に素朴な滋味があり、きな粉と黒蜜をかけて食べる。賞味期限は2日と短い。

関東地方のくず餅の起こりは諸説あるが、江戸時代に水にぬれて異臭を放つ小麦粉を農家がもらい受け、長く発酵させて食べるようにしたというのがほぼ通説になっている。寺社周辺には、くず餅の店が多い。最も有名なのは亀戸天神で江戸期の1805年(文化2年)創業の船橋屋(東京・江東)だろう。芥川龍之介、永井荷風、吉川英治ら多くの文豪に愛された。

本門寺の周辺にはこれより古い老舗が並び立つ。江戸時代が舞台の池波正太郎の小説「鬼平犯科帳」シリーズの「本門寺暮雪」で、主人公、長谷川平蔵が本門寺近くの茶店で「名物の葛餅」を食べているシーンがある。平蔵が本門寺の石段で刺客に襲われた際、茶店で飼っていた「柴犬」が刺客の足にかみつき、危急から救う。実在した平蔵(1745~95)も、池上でくず餅を食べていたかもしれない。

東急池上線・池上駅の近くに建つ浅野屋。1752年(宝暦2年)の創業で、11代目店主の浅野隆さん(76)は「くず餅は本来、節分明けからショウブの花の頃までの2~6月の菓子でした。1年中作るようになったのは戦後からです」と説明する。

細長い三角に切られたくず餅は酸味と弾力があり、きな粉は香ばしく、黒蜜はあっさりしていて、つるりと喉元を通っていく。そして箸休めのしば漬けが意外に合う。店頭で売られる持ち帰り用のくず餅は夕方前には売り切れてしまう。

店の裏にある工場を見せてもらった。地方の工場で1年以上発酵させたでんぷんの塊を購入し、工場でさらに1年程度寝かせる。その後、たるに移して何度も水を入れ替えて臭みと雑味を抜いていく。そして餅の種を約30センチメートル四方の竹製のセイロに入れて、下から蒸気を当てて蒸し上げる。浅野さんは「50年以上作っていても、毎日が真剣勝負」と話す。

浅野屋を辞して、本門寺通りの商店街を抜けると、本門寺の総門の近くに相模屋、池上池田屋の2軒のくず餅店が隣り合って建つ。

相模屋の入り口の脇には「元禄9年(1696年)」に建てられたという旧平間街道の道標がある。13代目の山本猛さん(59)は「道標ができた頃に移り住みましたが、くず餅を始めたのは昭和30年代からです」と言う。くず餅は濃い灰色で、しっかりした歯応えがあり、黒蜜も濃厚だ。

池上池田屋は2011年に改装し、カフェ風の造りにしている。ここの「久寿餅」は三角形で卍(まんじ)型に並び、きな粉だけがかかっている。来店客が好きなだけかけられる黒蜜はとろみが強いが、甘さは抑えめだ。18代目を名乗る指田健二郎さん(63)は「屋号は元禄期からあるようだが、普段は農家で、年に20日も営業していなかったはず。創業の古さをPRするつもりはない」と話す。

くず餅も時代の波の影響を受けている。発酵食品特有の酸っぱさを、最近はどの店も抑えている。酸味が強いと、購入客から「傷んでいるのではないか」と言われるからだ。池上池田屋は店で製造していたが、特有の臭いに周辺から苦情が相次ぎ、埼玉県川口市に同業者と共同で工場を建て、そこからくず餅を店に搬入している。それでも「池上以外に店を広げる気はない」(指田さん)という。

浅野屋も3年前から定休日を従来の木曜日に月曜日も加えた。浅野さんは「お客さんから怒られるけど、自分の体力と相談しながら無理はしたくない」と笑う。多店舗化も派手な宣伝もせず、身の丈に合った商売を続けている。多くの手間と時間をかけながらも地味な存在のくず餅と同様、どこか潔さを感じさせる。

<マメ知識>関西は別物 本物の葛入り
 同じ「くず餅」でも、関東と関西では全くの別物だ。本物の葛が入っているのは関西で、水に溶いた葛粉に砂糖を加えながら火にかけて練っていく。透明でぷるんとした食感と上品な風味が特徴だ。
 多くの時間と手間をかけて作られるのは関西の葛餅も同じだ。山からマメ科の多年生植物の葛の根を採取し、根をつぶして取り出した粗葛を何度も水洗いして不純物を取り除き、自然乾燥させて葛粉を作る。奈良県で生産される「吉野葛」「吉野本葛」が特に良質とされている。

(東京地方部 杉野耕一)

[日本経済新聞夕刊2017年10月24日付]

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