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ある特定分野の深い情報収集や、最寄りの公共図書館では手に入らない資料が必要になったとき、どうすればいいだろうか。あまり知られていないものの、使いこなせばビジネスパーソンの味方になるのが専門図書館や大学図書館などだ。活用法をまとめた。

企業関連の書籍・資料が集まる「ビジネス情報コーナー」(東京都港区の東京都立中央図書館)

企業関連の書籍・資料が集まる「ビジネス情報コーナー」(東京都港区の東京都立中央図書館)

日本図書館協会(東京・中央)によると、日本の図書館は、自治体などが設置する「公共図書館」のほか、民間企業、団体、研究機関等が運営する「専門図書館」、大学に付属する「大学図書館」、「国立図書館」などに分けられる。

「専門図書館は、一般書店や公共図書館にはない資料に出合うことができる。実は、使える情報の宝庫です」と語るのは、405団体が加盟する専門図書館協議会(東京・中央)の鈴木良雄事務局長だ。

旅・食文化・都市問題…映像資料も

特にビジネスパーソンに関係が深そうな分野の専門図書館について、鈴木事務局長に紹介してもらった。(1)旅の図書館(東京・港)(2)食の文化ライブラリー(東京・港)(3)石川武美記念図書館(旧お茶の水図書館、東京・千代田)(4)市政専門図書館(東京・千代田)の4つだ。

公益財団法人日本交通公社が運営する(1)の「旅の図書館」は、観光関連の学術誌や観光統計資料、ガイドブックなど約6万冊をそろえる。

(2)の「食の文化ライブラリー」は、味の素食の文化センター(東京・港)が1989年から収集してきた食文化の書籍、雑誌など4万冊が並び、江戸時代以降の料理書などの貴重書や食関連のDVD、映画やドキュメンタリーなども所蔵している。

また(3)の「石川武美記念図書館」は、主婦の友社を創業した実業家であり編集者の石川武美氏が47年に開設し、近現代の日本の女性雑誌を蔵書の核とする「近代女性雑誌ライブラリー」部門と、古文書を中心とした「成簣堂文庫」部門を展開する。

(4)の市政専門図書館は公益財団法人「後藤・安田記念東京都市研究所」が運営。都市問題や地方自治に関する専門図書館で、主に近代以降の戦災復興や戦前・戦後期の都市計画、町内会・自治会、地方自治体の行政資料のほか、政府各省庁の統計書、白書や専門雑誌も閲覧できる。

そのほか、日本貿易振興機構(ジェトロ)の「ジェトロ・ビジネスライブラリー」は東京と大阪にあり、世界各国の統計や会社・団体名簿、貿易・投資制度、関税率表など実務につながる資料がそろっている。

大学図書館、増える一般公開

専門図書館協議会の「専門情報機関総覧」2015年版には約1600機関が掲載されている。専門図書館は、原則、設置組織内の研究をサポートする目的であるため、全館に当てはまるわけではないものの、誰でも使えるように一般公開し、情報発信しているケースも多い。必要とする専門分野を扱う図書館をインターネットで検索することで見つかる可能性は高い。

また、学術論文をはじめとした研究資料が豊富なのが、大学図書館だ。教員や学生しか使えないイメージがあるが、一般開放するケースが増えている。東京大学総合図書館は所蔵資料を必要とする人なら利用できるようにしている。

私立大学の9割が加盟する「私立大学図書館協会」の会長校・名城大学付属図書館(名古屋市天白区)の水谷伸司さんは「近年は大学の社会貢献が求められている中で、図書館を一般開放する流れがある。研究資料に加え、各大学で教科書的に使われるような図書の所蔵が多いことも強み」と、ビジネスパーソンに参考になる資料があると語る。

そのほか「最後の砦(とりで)」として頼りになる存在が、日本国内で出版された出版物を収集・保存する国立国会図書館だ。東京本館や関西館(京都府精華町)があり、探したい資料はほとんど見つけることができるだろう。遠隔地から複写を申し込めるサービスもある。国内最大級の200万冊を所蔵する東京都港区の都立中央図書館も調査研究型として図書の貸し出しは行わず常に閲覧できる環境を整えている。

これらの図書館は、利用できる対象者や貸し出しの有無など使用条件が各館で異なる。事前にインターネット等で確認しておくことが欠かせない。

(ライター 田中輝美)

[日本経済新聞夕刊2017年10月23日付]

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