二重跳び挑戦 体当たり59歳、前飛び30秒もたず激痛
動画投稿サイト「ユーチューブ」で、二重跳びの練習風景を見つけた。記者(59)は小学生のころ、難なくこなしていた。最近、運動不足だし、久しぶりにやってみるか。ところが、甘くみたのが大間違いだった。
週末の夜。押し入れに眠っていた縄を引っ張りだし、自宅マンションの駐車場に向かった。本当は公園に行けばいいのだが、周りから見られると恥ずかしいので、こっそり挑戦することにした。
まずは縄を1回転させる前回し跳び。簡単にできる。後ろ回し跳び。これもOKだ。いよいよ二重跳び。ところがまったくできない。縄を2回回す前に着地してしまう。足が縄に引っ掛かる。疲れてジャンプができなくなってきた。まだ30分もたっていない。
二重跳びも自転車や水泳と同様、一度覚えたら年を取っても難なくできると思っていた。だが実際はそうはいかない。二重跳びができなくても、生きていくうえで支障はない。でも、できたものができなくなるのは悔しい。プロ縄跳びプレーヤーで、ギネス記録を持つ生山ヒジキさん(35)に教えを請うことにした。
「柔軟体操をしっかりやってください。いきなり跳んではだめですよ」。10月上旬、東京都文京区の総合体育館で生山さんの個人レッスンを受けた。言われたとおり、屈伸をし、アキレスけんを伸ばす。個人差はあるが、50歳を過ぎると体の柔軟性はかなり低下する。「縄跳び程度なら」と軽くみると、大けがにもつながりかねない。
続いて前跳び。「成人の場合、前跳びを30秒間続けられる力がないと、二重跳びは難しい」と生山さん。前跳びをすることで二重跳びをするための力をため、「二重跳びに移る際にその力を爆発させる」(生山さん)のだという。
「なんだ30秒か」と思ったが、これが予想外にきつい。15秒跳んだら、足が引っ掛かった。再挑戦するも、なかなか30秒間、飛び続けられない。休み休みしながら繰り返したが、疲れがたまってきて30秒間の壁を越えられない。背中に激痛が走ったのを機に、跳ぶのを中止した。
全国の延べ600の小学校で縄跳びの指導をした生山さんによると、昔に比べて小学生の体力が低下し、二重跳びができない子も増えているという。だが大人と異なるのは「正しい指導をすれば、すぐできるようになる」ことだ。
大人はどうすればいいのか。「日ごろから運動をしていなければ、思うように体が動かないのは当たり前。急がずにじっくり練習すれば、必ず跳べるようになります」と生山さんは励ましてくれる。
そこで、今後のトレーニング方法を聞いた。ポイントは2つ。まず、30秒の前跳びをしっかりできるようにする。2つ目は二重跳びの「感覚」を身につけることだ。
感覚のトレーニングは、1、2、3と3回跳び、3回目に高く跳ぶジャンプを繰り返す。同時に3回目は空中で、ももを2回、手でたたく。その際の手の位置は、ちょうど二重跳びで手首を回す位置と同じになる。
縄の長さの調整から着地まで二重跳びの流れも習った。「流れをイメージしながらトレーニングを積むことで、二重跳びがぐんと近づく」と生山さん。意欲がわいてきた。
日本での縄跳びは、1870年代に教育体育の先進国だったドイツから輸入された器械体操に、縄跳びが入っていたのが始まりとされる。小学校などの体育に取り入れられているほか、全身を使う有酸素運動のため、最近は体づくりにと取り組む人も増えているという。
二重跳びは前跳びよりもワンランク上。生山さんによると、二重跳びの醍醐味は「小学生なら『できないことができた』という達成感、中高年以上は『まだまだいける』と自信が得られること」。よし、もうひと頑張りしよう。
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「エア」では達成感なし
週末、二重跳びのトレーニングに励んでいる。30秒間の前跳びは、もうすぐクリアできそうだ。ジャンプ力も幾分、高まったような気がする。「そろそろいけるんじゃないか」と、ある日、二重跳びに挑戦してみた。「できた」と思えた瞬間があったが、思い込みかもしれない。生山さんのお墨付きを得られないと本当にできたとはいえない。
最近、注目されている縄跳びに、縄を使わず跳ぶ「エア縄跳び」がある。場所を選ばずに手軽にでき、通常の縄跳びと運動量は変わらない。ダイエットを目的に、取り組む人も増えているという。ただ、エアで二重跳びをやってみたが、手応えがない。達成感が大事な二重跳びには不向きなようだ。
(大橋正也)
[NIKKEIプラス1 2017年10月21日付]
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