料理での用途が限られ、使い切れずに保管してあるスパイスやハーブ。ひと工夫して使い道を広げられないだろうか。家庭で日常的に使える方法を探った。
エスビー食品のスパイス&ハーブマスター、遠藤由美さんのおすすめは、「マヨネーズやケチャップに混ぜてディップにすること」。それぞれ大さじ2に対して、スパイスやハーブを小さじ3分の1から2分の1程度、混ぜ合わせるだけ。
マヨネーズやケチャップに混ぜて
カレー粉を混ぜたカレー風味マヨネーズは「野菜との相性抜群で、カレー味が好きな子どもが喜ぶ」(遠藤さん)。ケチャップにバジルを混ぜたバジルケチャップは、トーストに塗って焼けばピザトーストの完成だ。
スパイスディップはマヨネーズやケチャップを使う料理なら何でも使える。マヨネーズディップでポテトサラダを作れば、いつもの作り方なのに、彩りや風味が違う料理に変身する。
振りかけるだけの料理もある。例えばドイツ料理の「カリーブルスト」。ソーセージを焼いてケチャップをかけ、好みの量のカレー粉を振るだけ。「見た目もおしゃれで、ホームパーティーの一品にもなる」と遠藤さん。
しょうゆの代わりにコリアンダー、減塩に
スパイスの香りには、幅広い使い方がある。例えば肉や魚の臭い消し。ナツメグ・クローブ・シナモンを同じ分量ずつ、ポリ袋に入れて混ぜる。その日の料理に使う肉や魚に振りかけて15~30分冷蔵庫に入れればOK。「加熱すれば香りは飛ぶので、味付けには支障がない」とスパイスコーディネーター協会の武政三男さんは話す。臭みがなくなって肉や魚がおいしくなる。
塩分が気になる人は「しょうゆ代わりにコリアンダーを使えば減塩にもなる」と遠藤さん。例えばきんぴらごぼう。しょうゆ小さじ1に対し、コリアンダーを6回振り入れる。「スパイスを使えば、塩が減った分を香りでカバーするので、料理の満足度は下がらない」。しょうゆを使う料理に応用できそうだ。
飲み物に使うならシナモンがおすすめ。紅茶やコーヒーにシナモンスティックをそのまま入れれば、ほのかに香りが楽しめる。
寒くなってきたらホットワインにするのもいい。カップにワインを注いで電子レンジに入れ、500ワットで1分から2分チン。好みでレモンやオレンジを輪切りにして1つ浮かべるとおいしい。
期限が大幅に過ぎたスパイスは、料理以外にも使い道がある。「サシェ」と呼ばれる香り袋だ。ティーバッグに好みのスパイスやハーブを入れ、小さい飾り袋に入れればできあがり。ティーバッグや袋は100円ショップなどで購入できる。
クローブには脱臭効果 袋に入れて靴箱に
サシェはサンショやクローブ、タイムを使うとすっきりした香りになる。フェンネルシードやカルダモンは甘い香り。「3種類以上混ぜて使うと香りがやわらかくなる」(武政さん)
クローブは「脱臭作用があるのでシューキーパーにもおすすめ」と武政さん。クローブは線香の原料で、日本人にはなじみのある香り。粉末が出ないよう布地にくるんで運動靴など臭いが気になる靴の中に入れておく。「一晩入れておけば朝は靴の中がすっきりしている」。これなら大量に消費できそうだ。
そもそもスパイスを余らせないにはどうしたらいいのか。遠藤さんによると、ポイントは料理名でなく食材とスパイスの相性を考えること。「ハンバーグにナツメグ」ではなく「ひき肉にナツメグ」のように食材との相性で使い道を考えれば用途は広がる。ナツメグはひき肉を使う肉団子やロールキャベツにも合う。
香りや味を保つには「光・湿気・熱を避けるのが大切」と遠藤さん。バジルや一味唐辛子は日光の影響で色味が悪くなる。コンロの横など熱くなるところには置かず、冷暗所で保管しよう。
使うときにも注意が必要だ。「使う分だけ小皿や手にとってから入れるといい」(遠藤さん)。調理時は湯気が立っている鍋に直接振り入れがちだが、瓶に湿気が入って固まりやすくなってしまう。小皿を使えば、湿気と同時に入れすぎのミスも防げる。
スパイスやハーブの使い方は多様だ。普段の生活の中で活用して、香りも彩りも楽しもう。
(相馬真依)
[NIKKEIプラス1 2017年10月21日付]