柔らか関西弁でロボット提案 じわり口説き売上高3倍
ABB 菅井康介さん
スイスの重電大手、ABBの日本法人(東京・品川、アクセル・クーア社長)では2016年、日本の食品業界への産業用ロボットの売上高が13年の3倍になった。菅井康介さん(41)が立役者だ。知名度が低いところからのスタート。システムの構築力には自信がある。焦らず、売り込まず。物腰の柔らかさが相手に安心感を与え、3年目で結果を出した。
「うまくできるんちゃうかなと思いますけど」。食品メーカーからの「お弁当に唐揚げを入れる作業にロボットを使いたいんだけど」という相談に、菅井さんは唐揚げを山盛りにするのではなく、重ねずに平らに並べておけばうまくつかめると応じた。
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菅井さんは奈良県の出身。柔らかな関西弁で「お高くとまった外資系企業」という顧客の先入観を崩していく。
菅井さんは自動倉庫や工場内の搬送機械やシステムを扱う会社の営業職を経て、13年にABBの日本法人に入社した。ABBは同年から、日本では直接販売の実績が少ない食品業界の開拓に力を入れ始めた。
実際に営業を始めると安川電機やファナックなどの日本の大手メーカーの営業力や知名度が高く、「ABBという会社を知らない人もいた」。「日本のメーカーが多くあるのにあえて外資系を選ぶ理由はあるのか?」との質問も受けた。
前職で「様々な機械を組み合わせていかに限られたスペースで能力を出すか」を考えてきた。日本では自動車などの機械系製造業と比べると食品業界には生産技術を担う人員が少ないため、「システムの構築までまとめて受ける」ことを打ち出した。
日本の食品業界は包装機など専用機械の使用が多いが、ABBの本拠地である欧州では菓子やパン、冷凍食品などの整列や包装、箱詰めなどで活用が進んでいる。欧州での実績から製品をつかむ手先やソフトウエア、周辺装置などを駆使するノウハウを持っていると説いて回った。
機械業界の営業は「パッと行ってすぐ注文が取れるものでない」。焦らないこと、忍耐強いことがカギになる。約15年間の機械メーカーでの営業の経験が一定の余裕をもたらした。