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「企画書を仕上げなくてはならない」「新商品開発のプロジェクトを任された」。情報収集に急ぐなか、ネット時代であってもビジネスパーソンの頼りになるのが実は図書館だ。本を借りて読むだけではない、進化している図書館の活用法をまとめた。

司書に相談できるレファレンスサービス

司書に相談できるレファレンスサービス

東京都内の企業に今春就職した大脇政人さん(24)は、千代田区立千代田図書館に足を運んで驚いた。ビジネス関連図書を並べたコーナーが充実し、電源やWi-Fiが使える席も並んでいた。「図書館で仕事ができるなんて思わなかった」。これから仕事用に活用しようと考えている。

本を読んだり借りたりする場所というイメージが強い図書館だが、国内で2000年ごろに米ニューヨーク公共図書館のビジネス支援の取り組みが紹介されたことをきっかけに、国内各地の図書館でもビジネス支援の動きが始まった。

午後10時まで「営業」も

全国公共図書館協議会(東京・港)がまとめた「公立図書館における課題解決支援サービスに関する報告書」によると、14年度、ビジネス情報のサービスを実施している図書館は、都道府県立で45館(95.7%)、市町村区立でも525館(40.9%)に上った。

冒頭の千代田図書館が掲げるのは「あなたのセカンドオフィスに。もうひとつの書斎に」。19万冊を所蔵し、ビジネスに役立つ資料をそろえているほか、平日は仕事帰りでも利用できるように午後10時まで開館。240席のうち82席がデスクタイプで、個別に仕切られ集中しやすい席もある。

資料探しでインターネットカフェに行けば有料で資料には限りがある。「図書館では無料で多くの資料に触れられる。千代田図書館に限らず、ビジネスを発想するセカンドオフィスとしてもっと活用できる」と同図書館広報室の坂巻睦チーフは語る。

そのほかにも、神奈川県立川崎図書館は自然科学・工学・産業技術を中心に幅広い資料を収集しており、鳥取県立図書館は手厚い支援体制とサービスで知られるなど、各地に特色を持つ図書館がある。

ただ、図書館をうまく活用しているビジネスパーソンは「まだまだ少ない」と指摘するのは、ビジネス支援図書館推進協議会(東京・千代田)の会長を務める竹内利明・武蔵野大学客員教授だ。初心者にとっては、図書館利用はハードルが高いと感じることも多い。では、どう活用したら良いのだろうか。

資料探しのプロ、司書を味方に

竹内氏によると、ビジネスパーソンに役立ちそうな主なサービスとしては(1)ビジネス関連コーナー(2)オンラインデータベース(3)レファレンス(調べ物相談)機能(4)相談会や講演会――などのイベントが挙げられる。

(1)のビジネス関連コーナーでは、ビジネス関連書籍を1カ所に集めて探しやすくなっているほか、民間調査会社が発行する市場調査リポート、最新の技術動向をまとめた専門書など、一般の書店には並ばないような高額で専門的な資料を見ることができる。

(2)のデータベースは、過去の新聞記事や、法令・判例、科学技術情報や論文などさまざまな分野の情報を検索して調べることができる。

(3)の調べ物相談サービスを通じて司書に問い合わせれば、図書館の資料を使って探したい情報の入手を手伝ってくれる。図書館によっては、来館しなくても電話やメールでも可能だ。

(4)の定期的にビジネス相談会を開催している図書館も少なくない。金融機関や中小企業診断士と連携しているケースもあり、無料で新規事業や特許、経営改善など専門家のアドバイスを受けることもできる。

竹内氏は、ビジネス支援を既に手掛けている都道府県立の図書館に直接行くのが手堅いとすすめる。活用する際の注意点としては図書館司書としっかりコミュニケーションをとることだ。「レファレンスサービスの内容は担当者によって異なる。最初は、うまくいかないこともあるかもしれないが、資料を探すプロなので、相性のあう司書を見つけるといい」と助言する。

一方、勤務時間内に図書館に足を運んで調べ物をすることが会社の業務にあたるのかどうかは、ケースや会社によって異なる。まず職場で相談、確認することが欠かせない。その上で、業務の一環であることを忘れずに利用するよう心がけたい。

(ライター 田中輝美)

[日本経済新聞夕刊2017年10月16日付]

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