エンタメ!

エンタな話題

草間彌生の世界を体感 個人美術館、チケット年内完売

2017/10/10付 日本経済新聞 夕刊

カボチャの立体作品は草間芸術のシンボルの一つ(東京都新宿区の草間彌生美術館)

 前衛芸術家、草間彌生の初めての個人美術館が1日、東京都内に開館した。日時指定の予約制、90分ごとの入れ替え制のチケットは、すでに年内分が完売する人気ぶりだ。

水玉模様のカボチャが増殖するインスタレーション「無限の彼方へかぼちゃは愛を叫んでゆく」(2017年、東京都新宿区の草間彌生美術館)

 新宿区弁天町の住宅街に現れた鉄筋コンクリート5階建ての真っ白な建物。入り口のガラスの壁を覆う水玉模様に目を奪われる。増殖する水玉模様は、幼いころから幻聴や幻視を経験したという草間にとって重要なモチーフの一つだ。

 ミュージアムショップのある1階、2000年代に制作した版画と絵画のシリーズから約40点が並ぶ2階と3階。4階にはカラフルなカボチャのオブジェが鏡張りの壁面や天井に映り無限に広がって見えるインスタレーション、5階の屋上スペースに草間芸術のもう一つのシンボル、カボチャのオブジェを常設する。化粧室やエレベーター内の壁面やガラス面も水玉模様で埋め尽くされていて、草間ワールドを体感できる。

■ささやかな出発

 同館を運営する記念芸術財団(今年1月設立)の理事でもある建畠晢館長が「ささやかな出発」と話す通り、各階は約130平方メートルとやや手狭。そのため館内の移動は一方通行に限られ、来場者は作品を鑑賞しながら1階から5階まで階段で上り、最後にエレベーターで1階に戻る。

 入場は1日4回(各回50人)、90分の入れ替え制。同館ウェブサイトを通じて予約する仕組みだ。来年2月25日まで開館記念展「創造は孤高の営みだ、愛こそはまさに芸術への近づき」を開催後は、年2回ほど企画展を開く予定だ。

 英国を代表する現代美術館テート・モダンが「現代を生きる最も重要なアーティストの一人」と評するように、草間芸術は各国で高い評価を受けている。1990年代以降、ニューヨーク近代美術館、パリのポンピドゥー・センター、テート・モダンほか欧米、中南米、アジア各地の美術館で個展を開催。現在は2つの個展が世界を巡回中だ。今年8月、草間自身による初の個人美術館の開設が発表されると、ニュースは国内外で報道された。

 草間芸術はなぜこれほど支持されるのか。「草間氏のアートの基本は、水玉や人の顔といったモチーフの繰り返し。その手法は少女時代から変わらないのに、絵画、彫刻、映画などあれほどのバリエーションを生んでいるのが驚異的」と建畠館長は言う。草間作品のファンは「地域や年齢、性別を問わない」のも特徴だと指摘する。

■常に前向き進化

1929年長野県生まれ。10歳ごろから水玉と網模様を題材に絵画を描く。57年に渡米、ニューヨークで活動後、73年帰国。2016年に文化勲章。著書に自伝「無限の網」など。 (C)YAYOI KUSAMA

 「作品だけでなく、草間彌生という人間が好きだという人が多い」と話すのは、森美術館(東京・六本木)のミュージアムショップでグッズの企画・開発を担当する物販チームの松久壽子リーダー。中高年の女性ファンは「ヤヨイちゃん」と親しみを込めて呼ぶという。今年、東京・六本木の国立新美術館での「草間彌生 わが永遠の魂」展で制作した赤いおかっぱ頭の草間のマスコット人形は、あらゆる世代に飛ぶように売れた。「常に前向きで進化している姿にあこがれるのでは」と松久氏は見る。

 ゴッホやダリ、アンディ・ウォーホル――。自身の人生や風貌が話題を集める芸術家は過去に少なくないが、現代アーティストでは極めて珍しい。「人間が心理の深層に持っていながら、社会的な制約で抑圧されてきた欲望を直接的に表現する」(学習院女子大学の清水敏男教授)。そんな草間の芸術や生き方が、不自由な時代を生きる現代人を勇気づけるのかもしれない。

(編集委員 窪田直子)

[日本経済新聞夕刊2017年10月10日付]

エンタメ!新着記事

ALL CHANNEL