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『アウトレイジ』完結を聞く 北野監督、露骨さを貫く

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NIKKEI STYLE

「全員悪人」を旗印に、怒号が飛び交い、陰謀うごめく裏社会をドライに描いた映画「アウトレイジ」3部作が完結した。北野武監督きってのヒット作を自身はどうとらえているのか。

「オレの映画は日本でヒットしない」と、熱狂的ファンの多い海外との温度差を自虐的に語ることもあった北野監督。2000年代に発表した「TAKESHIS'」「監督・ばんざい!」「アキレスと亀」では芸術家としての苦悩も吐露したが、10年代に始まった「アウトレイジ」はエンターテインメントを追求して人気シリーズへと成長した。

漫才並の充実感

「うれしいよね。劇場で漫才やってウケたぐらいの充実感がある」と素直に喜ぶ。監督にとって転機となった作品といえる。

「アウトレイジ 最終章」(10月7日公開)は、暴力組織の内部抗争だけでなく、日本と韓国に影響力を持つフィクサーとの対立も加わり、国際的な抗争劇に発展する。監督はビートたけしの俳優名で元組長・大友を演じ、これまでと同様、脚本と編集も手掛けた。

「シリーズの最初は『痛えっ』という身体的な痛み、2作目は関西と関東のヤクザの言葉による大げんか。最後の今回はかけ引き、裏切り、腹芸がテーマ。一つ一つ違う味付けをしたから、それぞれが独立した作品ともいえる」と説明する。

「仁義なき戦い」シリーズで知られる深作欣二監督らのヤクザ映画に触発されながらも、そこからの脱却を意識した。「深作さんのシリーズは良い意味で水戸黄門的なもの(型)があったと思う。それをなぞっても仕方ないし、なぞったところで深作さんの小型になるだけ。だったら皆が『こうなるだろう』と予測するのと全然違う反対側をやってみた。誰も予想できないストーリーにしようと思った」

のし上がるためには裏切りもいとわず、下克上もある。かつてのヤクザ映画にあった義理と人情から離れ、乾いたタッチに徹した。「女房とメシを食っているような場面も出てこない。幹はあっても枝葉は描かない。出てくるのは悪事の相談と怒鳴り合いと撃ち合いばっか。(登場人物の)背中に情が見えると変な痛さが出るんだ。だから、なるたけそういう色をなくそうとした」という。

社会とかわんない

大友だけは、親分がやられればかたき討ちする昔風のヤクザだが「一匹オオカミでヤクザの世界にもなじめなかった。うまくふるまって出世するか、コマとして死んでいくか。現代の一般社会とかわんないよね」

シリーズを貫く「悪」というものについて「バレれば悪になる」と考える。

「かつてウォーターゲート事件で米大統領が辞任したが、歴代大統領も、やっていることはほとんど同じでも、バレたかバレないかで立派に見えたり、悪人に見えたりする。今の時代、社会を維持するために皆、露骨な欲望や暴力を抑えているが、戦国時代に首をはねたり腹切らせたりしたように、人間はしょせんひどいこともする。この映画の登場人物たちはある意味で正直。せめて映画ではそういう露骨さを見てみたいと観客は思うんじゃないか」

次作では、自身にとって初めてとなるような映画に挑戦しようと「今、頑張っているところ」と表情を緩ませた。

「アウトレイジ」シリーズ 関東を仕切る山王会と配下の暴力団の抗争を描いた「アウトレイジ」(10年)でスタート。「アウトレイジ ビヨンド」(12年)では山王会と関西の花菱会がぶつかった。激しい暴力表現や三浦友和、加瀬亮らを悪役に配したことなどが注目された。「最終章」を含め全作が海外の有力映画祭で上映されている。

(文化部 関原のり子)

[日本経済新聞夕刊2017年9月26日付]

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