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売れる営業 私の秘密

話せばわかる 積極接客 「驚きの提案」でリピーター TSIホールディングス 遠江咲子さん

2017/9/20付

 衣料品大手のTSIホールディングスはグループに多くのブランドを持つ。遠江咲子さん(29)は価格が高めの婦人服「アドーア」の稼ぎ頭、六本木ヒルズ店(東京・港)の店長を務める。最初に配属された店の販売首位に上り詰め、2016年に今の立場になった。聞いてこそ分かることがあると、遠慮せずに声をかける。来店客が驚きを感じるように自分の好みの服を薦める。

 ブラウスを手にじっと立っている女性客がいる。遠江さんが「何かの際に着るんですか?」と話しかける。ところが女性が探していたのはパンツ。「ブラウスもかわいくて見てたんです」

 そこで女性が求めていた細身のシルエットのパンツの入荷時期を伝え、名刺を渡した。女性は「来週以降来ます」と言って帰って行った。遠江さんは「実際に戻ってきてくれる人も多いですよ」と言う。

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 振り出しの頃は、客にあれこれ質問するのは買い物の邪魔になると思って遠慮していた。だが、尋ねないと分からないことは多い。値段のせいで迷っているのかと思っていると「1枚買うか2枚買うかを迷ってるだけ」などと意外な答えが返ってくる。「自分の物差しでしかお客様を見ていなかった」と振り返る。

 入社3年目に表参道ヒルズ店(東京・渋谷)の副店長になったときが原点だ。アルバイトの先輩販売員の売り上げに追いつけなかった。誰よりも売らなければならないのに、余裕のなさが客に伝わり、うまくいかない。悩んだ末に「目の前の客と向き合おう」と吹っ切れた。

 客に積極的に声をかけることが自分のスタイルになった。客が迷う理由が価格だったら、安い方の良いところを伝える。似た服を持っていたら「いったん家に帰って見比べてください」と帰す。「気持ち良く終わればまた来てくれる」という。

 このやり方で表参道ヒルズ店で月400万円を売る実績を上げた。遠江さんが今の店に移る際には「たくさんの客が礼を言いに来た」と、一緒に働いていた販売員は話す。

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 今は商品を薦める際にコーディネートで3着を見せることを心がける。トップス(上半身に着る服)を試着する客にはパンツやスカートも。そのいずれかに自分の強いお薦めを入れる。

 客が着慣れなかったり、合わせるのが難しい色やデザインだったりしても、「絶対いけます」と背中を押す。もちろん気に入ってもらえないこともあるが、「驚きの提案がはまればリピーターになってもらえる」。

 最近はベージュのトップスを手に取っていた客に、色違いのボルドー(茶色がかった赤)のトップスを薦めた。ベージュの方が無難だが、「1枚あるといつもの服の印象がかわります」と提案した。女性はボルドーのトップスと同じ生地のボトムスをまとめて購入。後日に「買って良かったです」とうれしそうに再来店してくれた。

 店長になって店全体の売り上げを重視する立場になった。六本木ヒルズ店の従業員は10人ほど。1人の販売員が顧客に応じている間に他のスタッフが必要なサイズの商品を持ってくるようにするなどチームの息を合わせる。この態勢づくりに1年かかったという。

 交代で取る昼休みには他の従業員と食事に出かけ、意見や悩みに耳を傾ける。お気に入りの販売員に会うために来る常連客が多く、「辞めずに続けてもらうことも重要」だ。全員が気持ちよく働けるように気を配る。

 個人の成果を職場で張り出すなど数字の管理には厳しいが、どう売り上げを伸ばすかなどの相談に乗る気配りも怠らない。六本木ヒルズ店の売上高は2016年度で2億円。「まずは年間3億円をみんなで取りたい」とチームの販売力を磨く。

(奥津茜)

とおのえ・さきこ
 2010年サンエー・インターナショナル入社。アドーア表参道ヒルズ店配属、12年副店長。15年丸ビル店店長。16年六本木ヒルズ店店長。

[日経産業新聞2017年9月20日付]

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