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職場の知恵

職場で「瞑想ストレッチ」 集中力を高めるワザ

2017/9/14 日本経済新聞 夕刊

 働き方改革が進むなか、いかに効率よく働き、短時間で成果を上げるかが、ビジネスパーソンにとって至上命令となっている。それに欠かせないのが、仕事中にいかに集中するか。手軽にできる集中力アップ法を専門家に聞いた。

 東京都千代田区のヤフー本社。平日の朝9時、まだ人影まばらなオフィスの一角に、靴を脱いで車座になった男女10人あまりのグループがいた。インストラクターの指示に合わせて、瞑想(めいそう)したり、立ち上がってゆっくりと歩いたり。1時間ほどでお開きとなった。

■「瞑想」研修、取り入れる会社も

「マインドフルネス研修」で瞑想するヤフーの社員(東京都千代田区)

 彼らが取り組んでいたのは、ヤフーが昨年から毎週、希望する社員向けに提供している「マインドフルネス研修」。社員でインストラクターの中村悟さんは、「何週間か続けると、ストレスの軽減や仕事中の集中力アップを自覚できるようになる」と話す。

 マインドフルネスは禅の瞑想法が起源。20世紀後半の米国で研究が進み、宗教色を抜いた形のものが、精神医療や有名企業のリーダーシップ研修などに利用され始めた。グーグルが社員研修にいち早く取り入れた例は有名だ。個人で実践するビジネスパーソンも増えているという。

 マインドフルネスのポイントは、今やっていることに意識を向けることだ。

 「1分間どこでもマインドフルネス」の著者で産業医の奥田弘美さんは、「例えば、仕事の最中に、『さっきのプレゼン、失敗したな』とか『明日の上司との面談で何を言おうかな』など、過去や未来に気持ちが飛ぶと、仕事の集中力が低下する」と指摘。「過去の嫌な出来事や将来の不安にとらわれている自分に気づき、『今ここ』に心を戻すコントロール力をアップするのが、マインドフルネス」と説明する。

 奥田さんがビジネスパーソンによく勧めるのは、ストレッチを組み合わせた「マインドフルネス・ストレッチ」。イスに座ったまま、腹式呼吸で呼吸を整えてから、肩をゆっくりと回すだけの簡単なものだが、通常のストレッチと違うのは、肩を回しながら骨、皮膚、筋肉などの感覚に意識を向けること。そうすることで、ストレッチによる体や脳のリラックス効果のほか、集中力もアップするという。

 マインドフルネスは自分の五感を使って意識を集中させていくため、歩行や食事、深呼吸など様々な動作と組み合わせることが可能だ。

 集中力は高めたいが、トレーニングや習い事は苦手という人には、別の方法もある。

 神経内科医の米山公啓さんは、「脳は複数のことを同時進行で処理するのが苦手なので、目や耳から入ってくる余計な情報を遮断し、処理する情報を絞れば、集中力はかなり増す」と指摘する。

■脳への「情報遮断」も有効

 米山さんによると、作家がよくホテルの一室に自分を缶詰め状態にしたり、スポーツ選手が本番前に音楽を聴いたりするのは、いずれも不要な情報を遮断して集中力を高めるため。「特に、アイデアをひねり出すような作業の時に、この方法は有効。オフィスでも、可能なら不要な視覚情報や聴覚情報を遮断できる静かな環境で作業したほうがよい」とアドバイスする。

 固定席のないフリーアドレスの職場なら、仕事により集中できる席を選べば、効率は一段と上がる。

 適度に休憩して脳を休ませるのも有効だ。「個人差もあるが、脳はせいぜい1時間ぐらいしか集中力が続かない。それ以上続けて同じことをやろうとすると効率が落ちる」(米山さん)

 休憩時は、軽いストレッチやウオーキングで体をリラックスさせたり、好きなお菓子を食べたりすると、副交感神経が優位になり脳がよりリラックスする。仕事を再開した時に、集中力が回復する。

 米山さんは「あえて自分にプレッシャーを掛けるやり方もある」と話す。仕事の後に遊ぶ約束を誰かとしたり、周囲に「今日は5時きっかりに退社します」と宣言したりすると、それまでに仕事を終わらせなければという意識が働き、自然と集中力が増す。

 ただし、無理な目標設定をすると効果が出ないので、まず自分がこなせる仕事の量を見極めることが大切だ。

(ライター 猪瀬聖)

[日本経済新聞夕刊2017年9月11日付]

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