我が家の生活音、響かせない 足音「遮断」声「吸収」
足音や話し声、テレビの音……。家の中で生活しているとどうしてもいろいろな音が出る。音が大きいと隣や下の部屋、外に届いていないか心配だ。音を響かせない対策法を探った。
「防音には『遮音』『吸音』という2つの対策の組み合わせが大事」。防音グッズを販売するピアリビング(福岡県宗像市)の梶原栄二さんは指摘する。遮音とは音を跳ね返して床や壁を通さなくすること。吸音は音を吸収して部屋内での反響を抑えること。遮音だけでは部屋に音が反響してしまい、吸音だけだと部屋の中は静かになるが外へ漏れてしまう。
どちらかに偏らず、バランスよく組み合わせたい。「コンクリートやゴムなど重くて固い素材は遮音性、布やスポンジなど軽くてやわらかい素材は吸音性がある」という。
音の問題は家の構造や性能に大きく左右されるが、最も悩みが多い場所は壁、窓、床の3つ。まずは床から。
異なる素材 床に重ねる
フローリングでは歩くだけで足音が響く。はだしで歩いたときの「どすんどすん」という振動は低音域。スリッパをはいたときの「パタパタ」という音やスプーンを落としたときの音は高音域だ。一般的に低音域は高音域よりも音が伝わりやすい。
梶原さんがすすめるのは違う素材を重ねて二重にして敷くこと。「異なる周波数を吸収し、音を抑えられる」
例えば100円ショップなどで手に入るジョイントマットの上にじゅうたんを敷く。毛足の長いじゅうたんを敷くだけでも対策になる。防音カーペットはそれ自体が異なる素材を重ねているため、効果が高い。さらに効果を求めるならゴムマットなど遮音性が高い素材を敷き、その上にじゅうたんを重ねる。不織布など柔らかい素材のスリッパをはいて、低音域の音を出さないのも効果的だ。
次に壁。テレビの音や話し声は壁を通して伝わりやすい。テレビと壁の間にメラミンスポンジを置くと、音が伝わるのを和らげてくれる。スポンジはテレビより大きい方が効果があるという。
壁沿いにも カーテン設置
窓ではなく壁沿いにカーテンを掛けるのも手だ。素材は重くて厚いものがいい。重要なのは、突っ張り棒などを使ってカーテンを掛けること。間に空気の層を作ることで音を伝えにくくする。「壁に直接布を貼ってしまうと振動をそのまま伝えてしまう」と梶原さんは指摘する。
部屋に家具を置くことも対策になる。ソファなど家具ががあれば、その分音が吸収される。何もないシンプルな部屋よりは音を抑えられる。
窓から屋外に漏れる音の対策には、カーテンが有効だ。ただ掛けるのではなく、窓を囲って隙間をなくす。カーテンレールが二重になっていたら、部屋側のカーテンの一番端を窓に向かって折り、窓側のカーテンレールに付ける。窓とカーテンの間にできる隙間をふさぐことで、音が漏れにくくなる。遮音カーテンを使えばなお効果は高まる。
自分で対策しにくい場所もある。中古住宅のリノベーションを手掛けるリノベる(東京・渋谷)の設計士、千葉剛史さんは「水道管やコンセント、換気扇などを伝わって漏れる音は難しい」と指摘する。対策には「リノベーションで遮音性が高い専用のものに変えるなどがある」という。ただし「楽器の音対策など高い遮音性能を求めると数百万円と高額になることもある」ので注意が必要だ。
そもそも家の遮音性能について決まりはあるのか。楽器演奏に特化して遮音性能を高めたマンションを手掛けるリブラン(東京・板橋)の1級建築士、樋口勝一さんに聞いたところ「デベロッパーが物件ごとに独自に決めている」との答えが返ってきた。「実は遮音性能は同じマンションでも部屋の位置によって異なるほか、設計上の数字と異なる場合もありコントロールが難しい」(樋口さん)
ただ「スラブ厚」と呼ばれるコンクリート床が厚いほうが遮音性は高い。「最近の物件では20センチが主流。2000年代は18センチ、1995年ごろは15センチだった」。物件探しの参考にしたい。
人によって不快に感じる音の種類や大きさは異なる。対策をしつつ、「お互いさま」という気持ちを持ちながら、深夜には大きな音を出さないなどの思いやりを持ちたい。
(若山友佳)
[NIKKEIプラス1 2017年9月9日付]
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