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テルモの京都支店(京都市)に勤める妹尾泰明さん(31)は点滴関連製品や注射器などを営業する。国内に約800人いる医薬情報担当者(MR)のうち病院向け部門の「ホスピタルカンパニー」で2016年度のトップ表彰を受けた。病院が気づいていないニーズをこちらから示す。じっくり話すよりも手短に多く。この姿勢でかき集めた情報から潜在需要をつかむ。

妹尾さんは新人時代に強烈な経験をした。「なぜ安全な製品を提案してくれなかったんだ。もう来ないでくれ」。ある病院の薬品を管理する薬剤部の部長から「出禁」をくらった。

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09年にテルモに入社し、神戸支店(神戸市)で点滴用チューブや注射器のMRを任された。MRは製品の不具合などの情報を集めるのも重要な仕事だ。病院回りを始めて半年ほどたったころ。納入先の看護師が患者の血糖値を測る際に誤って自分の指に測定器の針を刺してしまった。感染症の恐れがある事故だが、大事には至らなかった。

薬剤部長が怒ったのはテルモがそうした事故を防ぐ工夫をした製品を発売していたにもかかわらず、紹介していなかったからだ。妹尾さんは前任者が紹介したうえで病院が採用しなかったものと思い込んでいた。「先入観にとらわれてはダメだと強く感じた。人も製品もゼロベースで向き合うことにした」

以降、とにかく顧客とよく話すようになった。病院では医療機器の購買に関わる医師や事務などの人だけではなく看護師や薬剤師、機器の保守を担う臨床工学技士らも回る。病院と付き合いが長い地域の販売代理店にも毎日顔を出す。

「機器を実際に使うのは医師や看護師だが、埋もれた悩みは他の部署や現場の観察から見えてくることが多い」。世間話で終わることも多いが、院内に入り込むうちに自然と顧客のニーズもつかめるようになった。長話よりも頻繁に通うと毎回違った景色が見える。「30分の話を1回するよりも10分ずつ3回会った方が実りが多い」という。

苦い経験をバネに培った営業力は15年に異動した京都支店で花開いた。京滋地域ではテルモは点滴関連製品で2位に甘んじていた。神戸時代にこの分野で実績を残していた妹尾さんに白羽の矢が立った。

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