『はいからさんが通る』人気再燃 大正女性の姿に共感

花村紅緒(右)と伊集院忍 (C)大和和紀『はいからさんが通る』/講談社
花村紅緒(右)と伊集院忍 (C)大和和紀『はいからさんが通る』/講談社

少女漫画のロングセラー「はいからさんが通る」の人気が再燃している。アニメ映画・舞台化されたり、原画展が開かれたり。連載終了から40年、現代女性の心に響くのはなぜか。

「はいからさんが通る」のシリーズ累計発行部数は1200万部で、少女漫画史上屈指のベストセラー。昨年末から今年にかけては新装版も出版された。テレビアニメや実写映画など映像化も何度もなされてきたが、連載時の読者だけでなく、今の若い層にも読まれているようだ。「今も中高生からファンレターが来る」(版元の講談社)

原画展や舞台化

今秋は展覧会や舞台化、映画化もある。まず東京・文京区の弥生美術館で原画などを集めた「はいからさんが通る」展(9月29日~12月24日)が開かれ、続いて宝塚歌劇団花組によって舞台化される(10月7~15日、大阪・シアター・ドラマシティ、10月24~30日、東京・日本青年館。脚本・演出は小柳奈穂子)。劇場版アニメの新作も作られた。11月に前編、来年には後編が公開される予定だ。

袴姿の来館者も

なぜこれほど人気なのか。漫画のヒロイン紅緒の「袴(はかま)姿」への憧れはあるようだ。女性の袴姿は、近年は大学の卒業式だけでなく、小学校の卒業式でも見られる。明治~昭和を扱った展覧会の多い弥生美術館には最近、袴姿で来館する「袴女子」が少しずつ増えているという。

加えて、同美術館の外舘惠子学芸員は「NHKの連続テレビ小説『花子とアン』(2014年)あたりから、大正時代への関心が高まっている」と話す。このドラマによって、歌人の柳原白蓮の恋愛事件などがよく知られるようになった。「はいからさんが通る」展では、原画だけでなくこの時代の資料も展示するという。

現代人は大正期の何に引かれるのか。外舘学芸員は「大正は華やかな印象がある一方で、着物から洋装へと変わり、江戸情緒も失われた過渡期。めまぐるしく変化する現代と、通じるところがあるかもしれない」と見る。現代女性も「はいからさんが通る」のヒロインと同様、激動の時代を生きているのかもしれない。

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作者・大和和紀さんの話「歴史ものは古びない」

作者・大和和紀さん

連載を始めたころ、少女漫画誌は高校生の恋愛ものが中心で、歴史ものは少なかった。でも明治末~大正期に「ハイカラさん」と呼ばれた、えび茶の袴とブーツの女学生を描いてみたい、と編集部を説得した。大正は思想統制やロシア出兵、大震災など大変な時代でもある。それらに翻弄されながらも明るく生きる少女を描こうと思った。

物語の骨子が王道のメロドラマなので、その分ヒロインは少し“破壊”した。けんかっ早くて酒癖の悪いヒロインは、少女漫画では珍しかったのではないかと思う。ギャグもたくさん盛り込んだ。今読み直すと、20代だった自分の未熟な部分も見つかるが、そこがいいのだと思う。

連載開始から40年以上も愛され続けるなんて、こんなに幸せな作品はない。親子3代で読んでくださる方もいると聞く。

後年、源氏物語を原作とした「あさきゆめみし」を描き、現在は戦国期を舞台にした「イシュタルの娘」を連載しているが、歴史ものは好き。現代のトレンドを取り入れた漫画は、しばらくすると時代遅れになることもあるが、歴史ものはいつまでも古びないものだから。

■「はいからさんが通る」
1975~77年に講談社の「週刊少女フレンド」で連載された。大正時代を舞台に、男まさりの女学生花村紅緒と青年将校、伊集院忍の恋がロシア革命や関東大震災など波乱の時代を背景に描かれる。物語の後半、紅緒は行方不明になった伊集院の家族を支えるため出版社に入り職業婦人となる。
「わたしたちは殿方にえらばれるのではなく わたしたちが殿方をえらぶのです」「どのくらい 女より男がすぐれているとおっしゃるのか おためしください」など、男尊女卑の社会に立ち向かう女性の名セリフも多い。

(編集委員 瀬崎久見子)

[日本経済新聞夕刊2017年8月29日付]

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