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ニッキィの大疑問

将棋界、どんなところ? プロデビューは年に4人

2017/8/21付 日本経済新聞 夕刊

中学生でプロ棋士になった藤井聡太四段の活躍で、将棋に関心を持つ人が増えた

 藤井聡太四段が史上最年少で将棋のプロ棋士になった上、公式戦で29連勝と連勝記録を塗り替えたことが話題になったわ。将棋に興味が湧いたけど、そもそもプロ棋士の世界ってどうなっているの。

 将棋のプロ棋士の世界について、中島菜穂子さん(53)と守屋擁さん(33)が木村亮編集委員に話を聞いた。

――どうしたらプロ棋士になれるのですか。

 「まず、日本将棋連盟のプロ棋士養成機関である新進棋士奨励会に入会する必要があります。入会試験にはプロ棋士の推薦が必要で推薦した人が師匠となります。入会できるのは19歳以下で多くの人は小中学生のころ入会します」

 「6級から始まり、勝ち上がって四段からがプロですが、最終関門の三段リーグが非常に厳しい。三段の若手は東西合わせて30~40人いますが、四段に上がれるのは半年間に2人だけ。年間で4人しかプロになれません。26歳までに四段に上がれないと奨励会を退会させられます」

 「その後の昇段は、名人戦の挑戦者を決めるための順位戦というリーグ戦の成績などで決まります。順位戦は名人の下にA級からC級2組まで5クラスあり、基本的にプロになり立ては一番下のC級2組に入り、クラスが上がれば順次、昇段します。竜王戦の成績や、王座戦など他の棋戦でのタイトル挑戦や優勝で昇段することもあります」

 「棋士は順位戦で指している限り現役を続けられます。しかし負けが込むとクラスが下がり、C級2組から落ちると順位戦に参加できないフリークラスに入れられます。クラスが落ちても段位が下がることはありませんが、フリークラスには居られる年限や定年があります」

――男性プロと女性プロの違いは何ですか。

 「約160人いるプロ棋士はすべて男性です。女性で三段リーグを突破した人はまだいません。女性がなかなか四段に昇段できないのは、棋士を目指す人が少ないためというのが一般的な見方です」

 「1970年代に通常のプロ棋士制度とは別に女性のプロ棋士制度ができました。将棋連盟の研修会などで好成績を収め、女流2級以上になるとプロとなります。現在、約60人いる女流棋士で最も強いのは、6つある女流タイトルのうち五冠をもつ女流五段の里見香奈・女流王座ですが、奨励会ではまだ三段リーグに在籍しています」

――棋士は年間、どのくらい対局するのですか。

 「人によりますが、トーナメントでは勝たないと次の対局がないので、強い人ほど対局数が多くなります。羽生善治王座(王位、棋聖)は最も多い年で89局と、ほぼ週2回の割合で指しています。棋士の平均でみると年間20~30局程度ではないでしょうか」

 「年収は、四段になったばかりの人でサラリーマンの初任給程度です。順位戦に参加すると将棋連盟から給料が出ます。C級2組からクラスが上がるごとに額は増えます。王座戦などのタイトル戦は1局ごとに対局料が出ます。勝ち上がるほど対局料も上がります。トップクラスになると賞金や対局料だけで年間数千万円を稼ぎます。対局以外では、アマチュアへの指導対局や将棋教室の講師、テレビ解説などで収入を得ています」

――歴代で最強といわれるのは誰ですか。

 「大山康晴十五世名人ら、一時代を築き上げた棋士たちの強さを比べるのは至難の業ですが、現役の棋士たちに聞くと、羽生王座という声が多いようです。羽生王座は20代で当時の七大タイトルを同時に制覇した経験を持ち、タイトル獲得数は累計98回と歴代で最多です。将棋の技は日々、進歩を続けており、最新戦法にたけた現代棋士の方が有利なのは確かなようです」

 「今、話題の藤井聡太四段が将来、最強になる可能性は十分、あります。すでにトップレベルの技量をもっているといわれています。ただ、これだけ注目されると、藤井四段だけには負けたくないとなるのが勝負の世界。それをどう乗り越えるかが今後の課題です。同世代に強いライバルが出現して切磋琢磨(せっさたくま)するようになればファン層が広がり、棋士を目指す人も増えると思います」

■ちょっとウンチク

「負けました」でマナー学ぶ

 日本将棋連盟は対局マナーとして、始めるときの「お願いします」、投了するときの「負けました」、感想戦を終えるときの「ありがとうございました」を必ず言うよう、子供たちに指導しているという。

 この中で一番、抵抗がありそうなのが、「負けました」だろう。必死で戦ってきた相手に頭を下げ、敗北を自ら宣言するのは、プロでもアマチュアでも悔しいに決まっている。あえて、これを子供たちに課すことで勝負の厳しさを教えることの意味は決して小さくないはずだ。

 「負けました」と頭を下げて終わるのはスポーツを含め、おそらく将棋くらい。マナーの大切さを教えるうえで、将棋は格好の素材といえるだろう。

(編集委員 木村亮)

■今回のニッキィ
中島 菜穂子さん 派遣社員。マスキングテープにはまっている。「ある100円ショップのものは季節感のある品ぞろえで、安いのにクオリティーが高いので特にお気に入りです」

守屋 擁さん リサーチ会社勤務。御朱印集めが趣味で、すでに御朱印帳は3冊目。「週末に神社にお参りすると気分が一新でき、月曜日からまた頑張ろうという気持ちになります」

[日本経済新聞夕刊2017年8月21日付]

 「ニッキィの大疑問」は月曜更新です。次回は9月4日の予定です。

<お詫び・訂正>
将棋界、どんな世界? プロデビューは年4人 「初任給」はサラリーマン並み

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