撮るぞ絶景 初めてのドローン、施設で訓練 さあ海へ
ドローン(小型無人機)が身近な存在になってきた。専用売り場も増え、ドローンで撮った動画や写真も目にするように。ただ墜落や法律違反なども気になる。使いこなすのは難しいのか。素人の記者が実践してみた。
「ドローンは操作を加えない限り同じ位置にとどまり続けるので、操縦は難しくない」。こう話すのはドローン大手、中国・DJI社の日本法人、DJI JAPAN(東京・港)の加藤吾朗さん。横浜市内の屋内練習場「ドローン・サーキット SPLASH」で基本操作を教わった。
ドローンは原則、送信機(コントローラー)の左右2つのスティックを前後左右に動かして制御する。片側のスティックが上昇と下降、回転を、もう片方が前進と後退、左右の移動を受け持つ。
モーターを始動させ、左側のスティックを恐る恐る前に倒すと、ドローンは目線の高さまで浮き上がった。揺れやぶれもほとんどなく、拍子抜けするほどだ。本格的なドローンは人間の三半規管にあたる慣性計測装置(IMU)やコンパス、全地球測位システム(GPS)などを備え、スティックから手を離してもその場にとどまりつづける。
SPLASHで操縦を指導する稲垣知康さんが勧める基礎練習は、前後左右と上昇、下降の繰り返し。素早く動かすのは簡単だが、ゆっくり移動させるには指先の微妙な感覚が欠かせない。
その次は機首を常に前方に向けたまま、水平に四角形を描く。これができたら機首が常に進行方向を向くように四角形をつくる。慣れないうちは逆方向に操作しがちだ。さらに難易度の高い練習としては8の字飛行などがある。
基本操作は覚えた。ここまでの練習時間は計2時間ほど。一度だけ挑戦したラジコン飛行機も飛ばせなかったような記者だが、ドローンの操作は意外なほど簡単に感じた。では屋外ではどうか。そこで、ドローンの飛行規制の区域から外れた神奈川県の三浦半島の海岸へ向かった。
障害物がないので操作はさほど難しくなかったが、風の影響がかなりあったのは盲点だった。フワフワと左右に20~30センチメートルはぶれる。壁などに吸い寄せられるように近づき、ひやっとする場面も。
忘れがちだったのがドローンを肉眼で追うこと。今回のドローンはコントローラーにスマートフォン(スマホ)をつなぐ。本体のカメラから送られる映像がスマホで見られるため、ついドローンから目を離してしまう。
同行してくれたドローン撮影サービス、アージェント(東京・目黒)の新川裕一さんは「カメラにはドローンの真上や横、後ろにある障害物は映らない。本体から目を離すのは危険」と話す。バッテリーの残量も重要だ。「操作に夢中になって忘れがち」。残量が30%を切ったら警告音が鳴るように設定した。
上空約100メートルからカメラが捉えた海は鮮やかなエメラルドグリーン。被写体が美しいので適当にシャッターボタンを押してもきれいな写真が撮れたが、障害物にも気を配りながら瞬時に撮影するのはなかなか難しいと感じた。
実は機材を借りた約1カ月間に屋外で練習できたのはこの日だけ。都市部を中心にドローンの飛行が規制されており、機会がなかったのだ。
航空法により、人口集中地区(DID)などの屋外で重量200グラムを超えるドローンを飛ばすには、国の許可が必要。自宅の庭も対象だ。許可を得るには、飛ばすドローンの種類ごとに飛行時間が10時間以上など、一定の条件をクリアする必要があり、初心者にとって簡単ではない。
もっとも都市部を離れれば、全国的にはDIDに指定されていない地域が圧倒的に多い。遠出して絶景の撮影に挑戦するのを目標に、専用施設などで操作の腕を磨くのも楽しいかもしれない。
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飛ばしていい場所、確認を
ドローンを使った撮影を楽しむには正確な操縦技術が要る。ただ航空法の規制を受ける都心では十分な練習量を確保しにくい。「トイドローン」「ミニドローン」などと呼ばれる、重さ200グラム未満で規制対象外のドローンを練習用として使う愛好者もいる。
これらは自宅の庭や所有者の承諾を得た土地なら国の許可は不要。軽いので人の背丈程度の高さから落ちても、壊れたり床を傷つけたりするリスクは小さい。10万円を超える機種が多い通常のドローンに比べ1万円程度と安価だ。
道路上や条例でドローン全般の利用が禁止された公園などで飛ばしたり、人に当てたりすることは、そもそも許されない行為だ。十分注意しよう。
(小山隆史)
[NIKKEIプラス1 2017年8月19日付]
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