ダニ由来アレルギー 「舌下免疫療法」で治療に道小児適用、来年にも

2017/8/17付

ダニを主な原因とするハウスダストアレルギーの治療が進化している。従来は抗ヒスタミン剤などで症状を一時的に抑える対症療法が中心だったが、原因のアレルゲンを経口で体になじませる治療法が登場。現在は12歳以上にしか服用が認められていないが、国が承認すれば来年には5歳以上に対象が広がる。4人に1人がかかっているとされるダニのアレルギーを若いうちに治療する方法として関心を集めそうだ。

ハウスダストにはダニの死骸やフンが含まれ、くしゃみや鼻水、鼻づまりなどを引き起こす「通年性アレルギー性鼻炎」の原因となる。場合によっては一生の付き合いになる。そんな症状と決別できる可能性を広げたのが「アレルゲン免疫療法」だ。

2015年秋、鳥居薬品と塩野義製薬がダニのエキスが入った錠剤を舌下に含ませるアレルゲン免疫療法薬を発売。1日1回服用し、数年かけアレルゲンを少しずつ体に慣らしていく。定期的に注射するアレルゲン免疫療法はあるが、痛みを伴わず自宅で簡単に治療できるようになった。

「以前は壊れた水道のように鼻水が出ていたけど、薬を飲み続けて半年ほどたつと鼻をかむことはほとんどなくなった」。こう話すのは、千葉県船橋市に住む浅岡麻里さん(25)だ。歯科衛生士の仕事をしているが「くしゃみや鼻水がひどいと集中できなかった」。母親から免疫療法の存在を教えられ、日本医科大学付属病院(東京・文京)で治療を開始。薬の服用を始めて1年半になるという。

治療にあたる耳鼻咽喉科の大久保公裕教授は「ダニのアレルギーは世界共通の問題だが日本では症状が出ていても原因に気付いていない人も多い」と話す。「アレルゲン免疫療法で治療できる可能性があることを知ってほしい」と訴える。

アレルギーの原因を調べる検査には血液検査のほかに、アレルゲンに対する皮膚の反応を調べる皮膚反応テストなどいくつか種類がある。ダニは夏から秋にかけて繁殖し、アレルギー症状が出る人も多いとされる。原因となるアレルゲンを特定するため、まずは病院に足を運ぶことが必要だ。

舌下に投与するアレルゲン免疫療法の薬は「ミティキュア」(鳥居薬品)と、「アシテア」(塩野義製薬)の2種類がある。いずれも保険適用の3割負担で、1カ月の薬代の自己負担額は約2000円。服用方法は錠剤を舌の下に置いて定められた時間保持し、飲み込む。その後、5分間は飲食やうがいは控える。前後2時間は激しい運動やアルコールの摂取、入浴などを避けることも必要だ。

個人差はあるが「一般的に2~3カ月で効果が表れ、治療には数年かかる」(鳥居薬品)。治療期間が長く注意事項も多いため、医師から十分説明を受け、納得して始める必要がある。

千葉大学医学部付属病院はアレルギーの免疫療法の専門外来を設けている

問題は舌下治療薬を処方できる医師がまだ少ない点だ。免疫療法に詳しい千葉大学の岡本美孝教授は「医師が処方権を得るには学会で用意した講習やeラーニングを受けなければならず、地方では身近な場所に治療可能な医療機関がない地域も多い」と指摘する。これまで全国で約1万人の医師が受講し資格を得たが、人材の養成には時間がかかりそうだ。処方可能な医療機関は鳥居薬品などがインターネットに設けたサイトで確認できる。

講習を設けている背景について岡本教授は「薬の副作用などについて医師自身も正しい知識を身に付ける必要があるため」と話す。「国内での報告はないが、薬の服用中にアナフィラキシーショックと呼ばれる強いアレルギー反応や、喉が腫れて呼吸困難になる可能性もないわけではない」という。このため、薬の処方初日は医師の目の前で服用し、様子を見ることが求められる。飲み始めてすぐは口内に腫れなどが見られることもあるが、通常は体がアレルゲンに慣れ、徐々に改善していくという。治療開始後1カ月は副作用が出やすいので注意が必要だ。

ミティキュア、アシテアとも現在は12歳以上にしか使用できないが、5歳以上の小児適用について厚生労働省に申請中だ。来春には結論が出る見通しで、承認されれば対象が広がる。

幼い頃にアレルギーを発症した子どもは、成長とともに様々な部位に新たな症状を引き起こす「アレルギーマーチ」に陥ることも多い。市町村の医療費助成などを活用すればコストを抑え、アレルギーを治療することも可能になる。対象が広がればアレルギーで集中力が切れることに悩む受験生にも朗報となりそうだ。

[日本経済新聞夕刊2017年8月17日付]

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