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ヤフーも「毎日席替え」 フリーアドレス職場の気配り

2017/7/31付 日本経済新聞 夕刊

 働き方改革の一環として、社員の固定席がない「フリーアドレス」を導入する企業が増えている。多様な就労形態に合わせやすく、生産性が向上するなど利点は多いとされる。一方で、同僚と意識的にコミュニケーションを密にする必要があるなど、フリーアドレス職場ならではのルールやマナー、注意点もある。

社内移動がしやすいバッグを貸与しているヤフーのフリーアドレスオフィス(東京都千代田区)

 ヤフーは2016年10月、東京都千代田区内に新しく建ったビルへの本社移転を機に、社内を原則フリーアドレスにした。端から端まで見渡せる広々としたフロアに、様々な色、形のテーブルや椅子を点々と配置。社員が思い思いの場所で、パソコンに向かったり打ち合わせをしたりしている。

 フリーアドレスといっても、単に席が決まっていないというだけではない。社員がいかにくつろいで、かつ集中して働けるかを目的にしたものが目立つ。カフェのようなスペースや靴を脱いで仕事をする空間を作ったり、しゃれたデザインの机や椅子を並べたり、色使いも実にカラフルだ。社員はどこで働こうと自由。どこにいても、必要ならチャット機能やパソコンの専用ソフトを使い、瞬時に連絡がとれる。

 ヤフー働き方改革推進室長の古藤遼さんは、「フリーアドレスは社員にはおおむね好評だが、改善点も見えてきた」と話す。

 フリーアドレスを導入した企業が一番頭を悩ますのが、一部の社員による席の占有、固定化だ。

■席固定化を回避

 フリーアドレスは、外出や会議などで長時間席を空ける時は、他の人が利用できるよう私物を片づけるのがルール。また、毎日同じ場所に座ったら、事実上、席が固定化して導入の意味がなくなる。どこの職場にもそういう「困った人」が少数ながらいて、他の社員の不満の種になっているようだ。

 そうならないために何が必要か。米系不動産サービス会社CBRE(東京・千代田)のワークプレイスストラテジー・シニアディレクター、金子千夏さんは、「一人ひとりがルールやマナーを守る意識を持つことが重要」と説く。CBREでは、フリーアドレスを導入する企業の社員向けに事前研修を実施している。

 ルールやマナー違反者に直接注意しにくい場合は、定例のグループ会議などの場で、全員にルールを徹底させる形で注意を促すのが効果的。もちろん、自分自身がルール違反者にならないよう気を付ける。

 席についたままでの仮眠も、仕事をしていないのに席を占有していることになるから、ご法度。オフィス内の見晴らしがよく丸見えなので、イメージ的にもよくない。フリーアドレスのオフィスは休憩や仮眠用スペースを設けているところが多い。仮眠は専用スペースを使うのがマナーだ。

 電話も気配りが大切。職種にもよるが、メールでのやり取りが普通になった今は、オフィスで電話は当たり前というのは昔の話。特に電話は声が大きくなりがちなので、周囲の迷惑になる。オフィスによっては電話用スペースを設けているところもある。長電話はちょっと場所を移動するなどするのがマナーだ。

 このように、フリーアドレス職場は従来以上にマナーや気配りが欠かせない。

■毎朝会議を開催

 フリーアドレスにすると社内のコミュニケーションが活性化するとよく言われるが、必ずしもそうではない。「むしろ、意識的にコミュニケーションを取る工夫が大切」と、イトーキのデザイン設計室長、中野健司さんは指摘する。そのために、毎朝、数分間のグループ会議を開いたり、定期的にグループランチをしたりする会社も多い。

 自らコミュニケーションを取りに行く意識は、新入社員や若手社員にとって特に重要だ。固定席の職場では、若手は先輩やベテラン社員の隣の席で日常的にアドバイスを受けたり、自然と技を盗んだりできたが、フリーアドレスではそれがしにくくなっている。

 ヤフーで働く新卒2年目の中瀬雄貴さんは、「最初のころは、仕事を早く覚えようと意識して先輩の近くに座った」と話す。CBREの金子さんは「若手を指導する立場の社員も、例えば教育日を決めて、その日は1日、隣に座るなどするとよい」とアドバイスする。

(ライター 猪瀬聖)

[日本経済新聞夕刊2017年7月31日付]

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