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売れる営業 私の秘密

「ノーから逆襲」 スーツ販売、入社2年で全社トップ はるやま商事 百合草亮太さん

2017/7/26付

 「10年に1人の逸材」。スーツ店「P.S.FA」(パーフェクトスーツファクトリー)などを展開するはるやま商事で、幹部にこう言わしめる販売員が入社3年目の百合草亮太さん(24)だ。1年目から全店の売り上げで首位を独走。販売員平均の3.5倍を稼ぐ。2年目には全社のトップになった。客の要望に応えられなくてもお構いなし。「1万円の予算の客に3万円のスーツを3着売る」勢いと確信が強さの源泉だ。

 6月中旬の平日。東京・池袋のP.S.FA本店を昼に訪れると、靴売り場で百合草さんが男性の会社員(27)を相手にしていた。「ビジネス用ならダントツでこれがお薦め。足も長く見えますよ」。靴を奥から取り出すときも走る。テキパキとした接客だ。

 靴が決まるとベルト売り場に移動。「色は靴と合わせるのが基本です」。30分足らずで計2万円弱を売り上げた。男性客は「よどみなく応えてもらった。丁寧で好印象だった」と話した。

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 はるやま商事は主力のスーツ店「はるやま」のほかに若者向けのP.S.FAを運営している。2015年に入社した百合草さんはP.S.FAの全国104店、パートタイマーを含めて900人を超える販売員のエースだ。

 接客の極意はまずスピード。求める機能や用途を聞き出し、最初から1~2着に絞り込む。あれこれと新商品を薦めても結局は迷わせてしまうからだ。明言しない場合も一瞬見せた表情を見逃さず「こんな感じでしょ」と鏡の前で服を合わせる。「多くの客はプロの断言を待っている」が持論。天気の話などの挨拶は極力省き、30~40分ほどの接客で購買につなげる。辻村和也店長(33)は「必要なことだけを迅速かつ丁寧に聞き出す能力は抜群」と評する。

 2つ目は客の問いに「ノー」だけで終わらないことだ。「洗えるスーツ」を求められれば「取り扱っていませんが、非常に軽くて伸びるスーツなら豊富です」と切り返す。無い袖は振れないが、代替案にうまく誘導する。

 こんな難題を出されたこともあった。「2本のパンツが付いたスーツを1万円で欲しい」。扱う商品は1着で税別2万9千円が下限で、むろん要望には応えられない。それでも「価格は違いますが、着心地や耐久性、シルエットの良さでは負けません」と説得。結果的に3着も買ってくれた。「ノー(ありません、できません)からの逆襲」はおはこだ。

 3つ目はコーディネートを売ること。この色柄のスーツにはどのシャツやネクタイが合うのか。ベルトと靴をセットで提案したように体形や好みを勘案して全体のファッションを作り上げる。インターネットで商品が買える時代には提案力こそが販売員の競争力だ。

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 自身がスーツを買った時の販売員の接客に感動し、この業界に飛び込んだ。入社後まもなく頭角を現したが、最初は「商品の知識もなく、最後は安さに頼った」。接客法を盗もうと、先輩らと他の衣料品店を週2~3回視察した。

 ここでアプローチの技術を学んだ。例えば第一声は「仕事用ですか?」などのイエスかノーで答えられる言葉をかける。「何かお探しですか」などの中身のある答えを求めると逃げられる可能性が高まる。「試着できますよ」はNG。「試着できないアパレル店なんてないですから」

 はるやま商事は4月、全社員に「ノー残業」を促す制度を導入した。百合草さんも現在は残業ゼロ。閉店後にしていた品だしや清掃を接客の合間にこなす。店内の移動は小走りだ。効率が一段と求められるなか、まずは直近の目標とする「最年少店長」の実現へ。10年に1人の若者の快進撃は続く。

(角田康祐)

ゆりぐさ・りょうた
 2015年はるやま商事入社。スーツ店「P.S.FA」(パーフェクトスーツファクトリー)の池袋本店(東京・豊島)に配属。全国で100店を超えるP.S.FAで新人から2年連続で販売実績トップ。17年度もトップを独走中。東京都出身。

[日経産業新聞2017年7月26日付]

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