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映画監督、新作は動画配信から 自由さと予算に魅力

2017/7/11付 日本経済新聞 夕刊

国内外に熱心なファンを持つ園子温監督の「東京ヴァンパイアホテル」(C)2017 NIKKATSU

 著名な映画監督や俳優らが、動画配信サービスで新作を次々と発表している。多いのは連続ドラマだが、映画も増えてきた。自由な創作環境や潤沢な予算などが魅力だという。

 銃を手にした女性たちが激しいアクションを繰り広げる。「愛のむきだし」「冷たい熱帯魚」などの映画で国内外に熱心なファンを持つ園子温監督の「東京ヴァンパイアホテル」は、アマゾン・プライム・ビデオで先月、配信が始まった。

 人類の滅亡を企てる吸血族と人類の戦いを、ルーマニアでのロケ撮影を交えて描いた。奇想天外な設定に過激なバイオレンスとユーモア。監督自身が脚本も執筆した全9話のオリジナル連続ドラマは、まさに園子温の世界。夏帆、満島真之介ら若手実力派の俳優たちが顔をそろえた。

 「創作の自由度がテレビより高く、映画では今回のようなオリジナル脚本にこれほどの製作費は出ない」。園監督は動画配信を選んだ理由を語る。

■国境越える観客

 現在は国内のみだが、今後世界に向けて配信の予定だ。「数千、数万の映画館で上映するのと同じくらいの公開規模になる。僕の作品を見たことがない国の人たちに鑑賞の機会が広がるというのは面白い」と監督。国境を越えた観客の広がりも作り手には魅力的に映る。「古い人間だから劇場で映画が公開されるのはうれしい。でも音楽の世界では配信が当たり前で、映画もいずれそうなるだろう。劇場では公開しないが動画配信はする、という映画に僕も挑戦するかもしれない」と監督は話す。

 同じくアマゾン・プライム・ビデオでドラマ「東京女子図鑑」を手掛けたタナダユキ監督、又吉直樹のベストセラー小説「火花」をネットフリックスでドラマ化した広木隆一監督ら、劇場映画に軸足を置きながら動画配信でも新作を発表する監督は増えている。

 先行するのは米国の映画人だ。デヴィッド・フィンチャー監督が製作総指揮を担った大作ドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」は動画配信から生まれたヒット作の代表格。さらにウディ・アレン監督は今年、動画配信で連続ドラマを発表し、マーティン・スコセッシ監督も制作予定という。

■ブラピも挑戦

 ドラマだけでなく映画にもこの波は押し寄せている。ブラッド・ピットが主演とプロデューサーを務めた「ウォー・マシーン 戦争は話術だ!」は5月からネットフリックスで配信が始まった。米軍人を主人公に、戦争の不条理と滑稽な人間たちを描いた約2時間の映画だ。ピットは「既存のスタジオでは挑戦的な映画を作るのが難しい。動画配信と組まなければ制作できなかったか、もしくは6分の1の予算で小さな映画になっていただろう」と動画配信の利点を語る。

 5月のカンヌ国際映画祭でも、動画配信が議論になった。最高賞を競うコンペ部門にネットフリックスの2作品がノミネートされたからだ。フランス国内の映画館では公開されず、動画配信のみで鑑賞できるとあって映画の定義を問う声が上がり、来年からフランスで劇場公開しない作品はコンペの対象外となった。

全世界で配信されているポン・ジュノ監督の「オクジャ/okja」

 カンヌで議論になった映画の一つが韓国のポン・ジュノ監督の「オクジャ/okja」だ。全世界で先月29日から配信されている。同監督は「映画館にいろいろな人たちが集まり、泣いたり、笑ったりしながら映画を見ることは最も美しい姿」と前置きしつつ、高精細テレビなどの普及によって「自宅にいながら動画配信で映画を見るのも一つの形ではないか。映画とテレビが共存できたように、動画配信と映画も平和的に共存できると思う」と話す。

(文化部 関原のり子)

[日本経済新聞夕刊2017年7月11日付]

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