シャツのシワとり、短時間で美しく 「肩・胸」に重点
ビジネスに欠かせないワイシャツ。自宅でアイロンがけができればクリーニング代が節約できるし、急な用事で必要になっても慌てない。短時間で美しく見える方法を探った。
出発点は洗濯だ。クリーニング店の3代目で「洗濯王子」として知られる中村祐一さんは「ワイシャツをタオルなどと一緒に洗うと、脱水時間が長くなりすぎてしわになりやすい」と指摘する。脱水はシャツだけなら30秒~1分で十分という。肩周りや襟、袖など生地が厚い部分は乾くときに縮みやすいので、脱水後によく引っ張ってから干す。
アイロン台選びも重要だ。小さすぎる台は、広い面積のしわを効率的に伸ばすのに向かない。「アイロンがけが苦手という人はたいてい小さすぎる台を使っている」(中村さん)。よく見かける消防服のようなグレーのカバーは、耐熱性は高いものの、上に載せた衣類が滑り落ちやすいのが短所。下に落ちたシャツを何度も引き上げる動作は時短術の大敵なので、滑りにくい綿製のカバーを選ぼう。
家事研究家でベアーズ(東京・中央)副社長の高橋ゆきさんは、ユニークな方法を提唱する。重視するのは肩から胸にかけてのしわ取り。この部分は人から真っ先に見えるためで、しわが残っていると「ほかの部分をいくらきれいに仕上げても美しく見えない」(高橋さん)。
背中の上部 つまんで台に
ベアーズ式はまずシャツの背中の上部を両手でつまみ、襟や肩側など上半分をアイロン台の上に載せる。襟を立てて人が着ているような形に広げ、アイロンの腹を使って肩と背中の最上部のしわを伸ばしていく。
アイロン台の先端部分を肩の内側に当てて生地を回しながらしわを伸ばす、といった面倒な作業は一切不要だ。このやり方で、両方の胸から肩、背中の上部にかけてのしわが10秒程度で消えていく様子は圧巻だ。
次は襟。よくやりがちだが、襟の端から端まで一気にアイロンを動かすやり方は、どちらかの端にしわが寄ってしまいがちなので禁物。アイロンが襟の中心部まで来たら、反対側からもう一度中心部に向かってアイロンを動かす。
襟ができたら腕と袖を仕上げる。腕はいったん縫い目に沿ってアイロンを縦に動かすものの、その後は横にスライドさせてしわを取るのがコツ。ボタンの間にあるタック(ひだ)は指で広げ、そこを目指してアイロンを動かす。手首に一番近いカフスは、内側からアイロンを当てよう。
前ボタン周辺 裏側から一気に
残るは「身ごろ」と呼ばれる、胸や腹、肩甲骨より下の背中の部分のみとなる。身ごろは面積が広いが、機械的にアイロンを動かすだけで短時間でしわを伸ばせる。前ボタンの周辺はやや細かい作業が必要だが、中村さんは裏側から一気にかける方法を勧める。アイロンがボタンに引っかかりそうだが、「アイロン台がクッションになってボタンがめり込むため、引っかかることはない」という。
ワイシャツのしわは、アイロンを使わずスチーマーだけで取ることもできる。アイロン用のミトンを手にはめ、生地の裏側に当てながら蒸気をかけるだけ。ミトンは百円ショップにもあるが、耐熱温度や使い方など違いがあるため、表示をよく確認しよう。
ブラウスならもっと簡単。生地を少し引っ張りながら蒸気を当てるとしわを素早く消せる。ミトンは不要だ。スチーマーはジャケットのしわを短時間でとるなどシャツ以外にも使えるので、1台あると重宝する。
アイロンがけは、実は終わってからが肝心だ。蒸気と熱を使ってしわを伸ばすため、アイロンをかけた直後は生地が温かく、わずかに湿っている。この状態で生地に力がかかると、簡単に新たなしわが生じてしまう。「クローゼットにかけたり、たたんだりするのは10分待ってからにした方がいい」(高橋さん)。アイロンが終わったらすぐにイスやソファの背にかけるのは禁物だ。
中村さんはワイシャツなら1枚3分ほどでアイロンがけできるという。3分と言わないまでも、5分で美しく仕上がるなら、忙しい朝には助かる。しわが伸びたワイシャツを着ると、仕事に取り組む気分まで違ってくる。まずはお気に入りの1枚を仕上げてみてはどうだろうか。
(小山隆史)
[NIKKEIプラス1 2017年7月8日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。