『メアリと魔女の花』 ジブリの正統的な継承者

スタジオジブリで「借りぐらしのアリエッティ」などを手がけた米林宏昌監督の新作。ジブリ出身の西村義明プロデューサーが設立したスタジオポノックの第1作である。美術、作画、色彩設計、映像演出など、スタッフにもジブリ出身者が数多く参加する。原作は英国の女性作家メアリー・スチュアートの児童文学。

赤毛の少女メアリ(声・杉咲花)が両親に先駆けて赤い館村の大叔母の家に引っ越してくる。メアリは猫に導かれて迷いこんだ森で珍しい紫の花を見つける。それは魔女の国から盗み出された魔法の花だった。

一夜限りの不思議な力を手に入れたメアリは、ほうきに乗って空を飛び、雲の上の魔法大学に降り立つ。女校長に学内を案内され、魔法科学者の授業も見学したメアリは大興奮。その強い魔力に校長は驚く。

しかしメアリが魔法の花を持っていることを知った校長は態度が急変。村の少年ピーターをとらえ、メアリをおびき寄せる。

空を飛ぶ少女、雲海に浮かぶ館、霧に包まれた森、姿を変えるもののけ……。ジブリ作品に頻出するイメージが次々と現れる。前作「思い出のマーニー」で繊細な少女の情感に寄り添った米林が、今回は対照的に快活な少女が躍動する力強いアクションを見せる。手描きの背景など画面の圧倒的な美しさも健在だ。

校長と科学者の貪欲さは科学万能主義の現代の病を思わせる。抵抗する赤毛の魔女は「この世界には私たちが扱いきれない力がある」と叫ぶ。実験失敗とメルトダウンのイメージは強烈で、ジブリ作品の底に流れる文明批判を受け継ぐ。

庵野秀明、片渕須直、細田守ら、かつてジブリと関係をもったアニメ作家の活躍が著しいが、米林と西村は最も正統的なジブリの継承者といえそうだ。驚きにはやや欠けるが、誠実な仕事ぶりで、安心して楽しめる。1時間43分。

★★★

(編集委員 古賀重樹)

[日本経済新聞夕刊2017年7月7日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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